「マネジメントしたくない」から一転、CTOというキャリアを選択した小川氏が語る、i-plugで実現したい未来とは?

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小川 伸一郎|株式会社i-plug 執行役員 CTO

1974年京都府生まれ。2002年大阪市立大学大学院理学研究科後期博士課程修了。博士(理学)。
大学院で修了後、Web制作会社、Webサービス会社にて受託業務からサービス開発まで幅広く経験。クックパッド株式会社では人事部でエンジニアの採用と評価の責任者を務める傍ら技術部の部長も兼務。その後株式会社タレンティオのCTOや株式会社ロコガイドのVPoEなどで、エンジニア採用から技術基盤の改善まで幅広い経験を経て、2022年6月にi-plugに入社。

株式会社i-plugについて

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まずはじめに、貴社のミッションや事業内容を教えて下さい。

当社は、「つながりで世界をワクワクさせる 次世代を担う若い人材の可能性を拡げる仕組みをつくる」をミッションに掲げ、学生と企業をつなげる新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox(オファーボックス)」を提供しています。企業は学生にオファーを送ることで能動的に採用活動を進めることができ、学生は企業からオファーを受けることで、それまで知らなかった企業を知ることができます。2022年卒の学生では190,000名以上登録があり、就活生の3人に1人が利用しているサービスです。

また、今月4日から、新しく20代・30代向けオファー型転職サイト「PaceBox」を正式リリース。より沢山の方々のキャリアに寄り添えるようになりました。

プログラミング少年から一転、1冊の本との出会いから研究者の道を志すように

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最初に、小川さんがインターネットやコンピューターへ興味を持ったきっかけを教えて下さい。

最初にコンピューターへ興味を持ったのは、今から36年程前の小学4年生の時です。あるカタログに載っていたオフィスコンピューターを見た時、コンピューターの持つ未来感に胸が躍りました。それから雑誌などでコンピューターを眺める日々を過ごしながら、少しずつ貯めたお年玉で、コンピューターを手に入れました。

当時は、まだいわゆるインターネットというものがなく、コンピューターでできることは、ゲームをするかプログラミングするか位しかありませんでしたが、私にとっては、それがとても面白くて。学校から家に帰ると、プログラミングばかり書いていました。

幼い頃からプログラミングが好きだったのですね。その後、そのままエンジニアとしてキャリアを歩むことになったのでしょうか?

高校1年生の夏頃までは、大学でコンピューターを学ぶために情報工学へ行こうと思っていましたが、高校の時、生物の先生が紹介した本がきっかけとなり、研究者を志すようになりました。

先生は、授業の雑談の中で「宇宙は5次元でできている」という内容の本を紹介されました。その話に非常に興味をそそられたため、先生に本のタイトルを聞いて、その日のうちに本屋へ買いにいきました。その本を読み進める中で、「もっと物理の研究をしたい」と、心変わりし、物理の世界へ進むことにしました。

大学では、物理を専攻され、その後、2つ大学院に進まれたのですね。

最初から「博士課程までやり切ろう!」と決めていたのですが、当時の近畿大学には物理学での博士課程がなかったため、担当教員に紹介いただいた大阪市立大学大学院 理学研究科へ進学し博士号を取得しました。

卒業後の進路は、研究者としての道を歩むなど色々な選択肢があったかと思います。その中で、WEB系の企業を就職先へ選んだ理由を教えてください。

研究者の道も模索していたのですが、博士後期課程の修了が9月だったこともあり、あまりうまく進んでいませんでした。一方でプログラミングを書くことは好きだったので続けていました。自分でサーバーを立ててサービスを作り、インターネットでアクセスできるようにしたりしていました。ちょうどそのとき、大学時代の同期が起業した会社(tenpo inc.)で開発の手伝いをしていたのですが、就職活動をどうしようか悩んでいたところ、「うちで働きながら、就職活動してみたらどう?」と提案してくれたので、一旦tenpo inc.に就職することにしました。

友人の立ち上げた企業で、エンジニアとしてキャリアをスタートさせた。さらなる技術向上を目指し、大阪から上京を決意

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その後、tenpo inc.には6年ほど在籍されていますね。

はい。当初、就活の間の期間限定で働くつもりでしたが、スーツを着て就職活動すること自体が億劫になってしまって(笑)

また、tenpo inc.では、WEBサイトの受託開発の業務に携わっていたので、「プログラミングって楽しいな。」と充実感もありました。

tenpo inc.では、どのような役割で仕事をしていましたか?

社長、共同創業者の後の3人目のメンバーとしてジョインしたため、徐々に、プログラムを書くという役割以外にも、マネジメントの領域も任されるようになっていきました。エンジニア、WEBディレクターを含め、20名位の方の仕事を見たり、相談に乗ったりしていました。

その後、何故、株式会社イオレへ転職されたのでしょうか?

「マネジメントをしたくない」という思いから転職を決意しました。当時の僕は、もっとプログラムを書ける仕事に就いて、技術を追及したり、難易度の高いモノを作りたかったんです。

ちょうどDeNAやグリーの知名度が上がり始めてきた時期でもあったので、東京のIT企業にいけば、自分の技術力を磨ける仕事があるのではと思い、大阪から上京してイオレに入社しました。

マネジメント業務を回避するため、イオレからクックパッドへ転職。一方、この転職を機に、組織マネジメントへの関心が高まった

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イオレでは、プログラムを書く仕事に没頭できましたか?

最初はプログラムを書くことに没頭していましたが、徐々にアプリケーションアーキテクチャの設計、サービスのコンセプト作りなど幅広く携わり、最終的には、インフラとアプリケーションの責任者のような仕事をしていました。

そうすると、いよいよ社内で「次のCTOは小川さんですね」という雰囲気ができてしまって。「そんな仕事はやりたくない(笑)」と思っていた時に、コミュニティの飲み会でクックパッドのエンジニアから「クックパッドどうですか?」と誘っていただいたのでジョインすることに決めました。

2013年 クックパッドに入社してから、どのような仕事をされましたか?

エンジニアとして入社し、最初の1年半くらいはエンジニアとして、有料会員向けのサービスの開発に携わってきました。

一方、会社全体としては、エンジニアの採用が頭打ちになってきたり、評価制度に関して不満が聞こえるようになってきたりと、組織課題が浮き彫りになってきました。

僕は年長者ということもあって実質リーダーのような役割を担っていたのですが、当時の部長から「会社全体のマネジメントに、もう少し携わってほしい」と言われるようになりました。

前述のように、これまで僕は「マネジメントはやりたくない」という思いが強かったのですが、クックパッドは優秀なエンジニアが多く、もっとみんなが楽しく働いて成果が出せるような環境を用意してあげたいという思いが芽生え始め、会社全体のマネジメントに従事することを決意しました。

心境の変化があったのですね。マネジメントへ興味を持つようになった動機は何かありましたか?

1つ目が、周りのエンジニアから「小川さん、マネジメント得意ですね」と言われたことです。もともと、うまくいっていないところに口を出したくなる性分でして、その性格が功を奏したのかもしれません。

2つ目が、毎月、飲みに行っていた同僚(のちのロコガイド CTO)の存在です。彼とは、会社の課題感について話すことが多く、会話を重ねるうちに、いつの間にか私の興味も、技術から会社全体に変わっていったように思います。

人事と技術部長を兼任し、精力的に組織課題に取り組んだクックパッド時代。その後、起業や複数のベンチャー企業を通じ、経営経験を積んだ

人事を兼任し、エンジニア採用に携わるようになったそうですが、どのようなことをされてきましたか?

その当時はエンジニアの採用は人事の仕事であり、エンジニアは手伝うという仕組みだったので、わからないことがあれば聞きやすいエンジニアに聞いてみたり、カジュアル面談のお願いをしたりなど、あくまでもお手伝いという雰囲気でした。

個人的にこの状況が良いと思っていなかったため、なんとか改善したいという一心で、当時、人事の役員へ「人事部を兼務させてください」とお願いし、受け入れていただきました。それからは、僕自身、より採用活動にコミットするようになり、誰を面接官にするとよいか、このインタビューは誰が対応しようかという調整を含めて対応するようになりました。

評価制度に関してはいかがでしたか?

エンジニアの評価制度は、なかなか難しいです。技術力だけでなく、企画力のところも入れるような評価設定にしなければ、サービスの成長には繋がらないため、その点も考慮した評価制度に変えようとしました。

一方、技術部の部長もされていますが、どのような役割でしたか?

技術部門の部長としては、主に開発基盤やモバイル基盤などの業務に携わっていました。

例えば、モバイルアプリのリリースを安定的に行うためには、部署間で調整が必要です。複数のリリースが重なった時、QAの観点から「品質を担保しずらい」という意見が上がってきますので、関係各所に「絶対来月でなければダメなのか、リリースの幅を狭められないか」など交渉しながら、社内調整を行っていました。

クックパッド退社以降、i-plugに入社するまでどのようなことをされていましたか?

クックパッドに在籍していた頃、マネジメントや組織に関わるビジネス書を読み漁っていました。30ー40冊ほど読む中で「経営=カルチャーである」と感じるようになりました。

それから、自身でレジャリーワークス合同会社という会社を起業したり、株式会社タレンティオのCTO、ロコガイドVPoEなどで経営の立場(もしくは経営に近い立場)を経験しました。

色々な経営者と話す中で改めて思った“本当にやりたいこと”。自分が実現したい世界がi-plugにあった

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2022年6月、i-plugへ転職を決めた理由を教えて下さい。

色々な経営者と関わる中で、「自分が本当にやりたいことは何なのか」と、改めて自分自身のキャリアを考えるようになりました。これまでのキャリアで採用周りに関わることが多く、そこに関心があるという事に気づきました。

エンジニアの場合は、特に2-3年で次のキャリアを選択する方が多いですが、その多くが「この会社ではやり切った、新しいことに挑戦したい」という方が多い印象です。私は、そのこと自体、悪いことではないと思っています。もっと転職しやすい環境・世の中になれば、企業側も人材を確保しやすくなります。一方、転職などの採用市場をよくすることは、エンジニアにとって楽しい世界を作ることに繋がると感じています。

だからこそ、i-plugの「ヒトのキャリアをもっと豊かにする」という考えに共感し、入社することにしました。

小川さんは、CTOとして入社されていますが、CTOとVPoEを経験した身としてその違いはどこにあると思いますか?

CTOは、経営を見る役割です。具体的には、技術戦略、採用方針や組織文化を考え、どうやっていくのか方針を考える必要があります。

VPoEは、CTOが示した方針のもと、現実問題、どうやって取り組んでいくのか戦術を考える必要があります。社内の勉強会の設定や開発プロセスの整備など、組織の中から働きかける役割です。

ただ、僕自身はCTO/VPoEは、特に必要な理由がなければ分けなくてもよいと思っています。組織が大きい場合、階層構造を作らなければいけない規模の場合は必要だと思います。

そんな小川さんの現在の仕事内容を教えて下さい。

現在は、下記のように情報システム周りの整備に注力しています。ただこれも時期によって変わって行くものだと思います。

<小川氏の主な役割>

採用広報、採用:2割

CIO的な役割:5-6割

経営/マネジメント:2-3割

直近は、エンジニア組織力強化に注力することが目標。将来は、テクノロジーの力で、ボタン1つで働き方を選択できる柔軟な世界を目指したい

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直近、CTOとして小川さんが取り組んでいきたい課題は何でしょうか?

直近、大きく2つの目標があります。

1つ目は、技術負債を解消しつつ、新規開発を行い、維持・拡張できる組織体制を作ることです。

2つ目は、開発力を高めることです。プロダクトに対して積極的に議論できる状態にしていきたいです。今ができていないという訳ではないですが、これまで経験した組織ではいろいろな職種の人と企画について議論をしていたなぁと思っていて。この体験はとても良かったと思っているので、開発組織の文化に取り入れていきたいです。

現在のi-plugのエンジニア組織体制とリモートの割合を教えて下さい。

現在、エンジニアは20名弱の体制です。

拠点は大阪、東京、名古屋にありますが、現在フルリモートで業務を行っています。

フルリモートなんですね!リモートワークで何か工夫されていることはありますか?

会社の制度として、フルリモートでもコミュニケーションを活発化するために、他の部門の方とオンラインでも飲むと会社から補助が出るという仕組みがあります。

しかし、「リモートのコミュニケーションをどうするか」はもう一度考え直さなければいけないと思っています。今、情シスの責任者もやっているので、システムを通してどんなことを実現していくかは、しっかり考えていきたいです。

最後に、小川さんが今後、i-plugで成し遂げたいことを教えてください。

将来的には、「ボタン一つで転職できる世界」を実現したいです。

現在、転職というと同じ職種で会社を変えることが多いと思いますが、もっと本来の職自体を変えるなどをカジュアルにできる環境になれば良いなと思っています。

例えば、最近「エンジニアになりたい」という方が増えていますが、一方で「一度、エンジニアになってみたけど、しんどいから辞めたい」と感じている人がいることも事実です。一度ダメだと思ったら、気軽に戻ってこれるという世界を作ることができれば、もっと人々は楽しく働くことができるんじゃないかと思います。

このボタン一つで気軽に転職できるという世界を実現するには、事前にわかっていなければならない情報が非常に多くなってくると思っています。難易度は高いと思いますが、テクノロジーの力でこの世界を実現できるよう、i-plugのエンジニア組織をもっともっと強くしていければと思っています。

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