資金調達累計67億円。先駆的な働き方を実現するクラスターCTOが語るエンジニア組織づくり

クラスター株式会社 執行役員CTO 田中宏樹

京都大学理学部休学中、現クラスタ―CEO・加藤直人氏と共にいくつかのWebサービスやスマホゲームアプリの開発を経験。2015年、現クラスターCEO・加藤直人氏とともにVR技術を駆使したスタートアップ「クラスター」を起業。2017年、大規模バーチャルイベントが開催できるVRプラットフォーム「cluster」を公開。サービスの大規模同期通信システムを独自に開発。現在はCTOとしてクラスター社のソフトウェア開発全般を管掌している。

クラスター株式会社について

 
 
 

 
 
 

御社の事業内容について教えて下さい。

イベント累計動員数2,000万人を超える、国内最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営しております。クラスターは、「人類の創造力を加速する」をミッションに掲げ、誰もがメタバース上で音楽ライブ、カンファレンスなどのイベントを開催できるプラットフォームです。同時に数万人と接続可能で、これにより大規模なバーチャルイベントの開催による“集まる”熱狂体験を提供してきました。また、法人様向けのイベントも手掛けており、累計動員数は2023年1月時点で2,000万人を突破いたしました。

パソコンオタクの友人に囲まれ過ごした中学時代。大学の学生委員会でのちの共同創業者となる現CEO加藤に出会う

最初に田中さんがインターネットやパソコンに興味を持ったのはいつですか?

中学生の時、自分の友人にはいわゆるパソコンオタクな人が多く、彼らはパソコンでプログラミングをしたり、DTMで作曲したり、3DCGの製作をしたりして、それを共有しあっていました。そういう光景を見て興味を持ったのが最初だと思います。
プログラミングをやっていた友人から「こんなものつくってみたから触ってみてよ」とプログラムを渡されたことなんかもありました。自分は当時プログラミングはほとんどやっていなかったのですが、分からないなりに調べながら自分の手元でビルドして実行してみて、後日友人に感想を伝えると、「それ動かせるのはプログラミングのセンスあるね」って言われたりしました。今思い返すと自分の能力を試されてたのかなと思いますが(笑)

その後も親から与えられたPCを触ったり、授業や研究でプログラムを書いたことはありましたが、本格的にプログラミングを学び始めたのは現CEOの加藤と起業を意識して活動し始めてからでした。

CEO加藤さんと出会った大学時代について教えてください。

大学では理学部に進学し、物理を専攻する傍らサークル活動のような形で学生委員会という組織に所属していました。加藤と出会ったのもこの学生委員会がきっかけです。

学生委員会は学生が運営している大学生協の下部組織で、活動内容は受験生、在学生向けに情報を発信したり、新入生のサポート等を行うのですが、大学の組織でありながら構造やシステムが会社のように整備されていました。
加藤と私はこの学生委員会の先輩後輩であり、学部も同じだったんです。
当時は二人で学内向け広報誌の制作・編集を担当したり、物理について加藤に教えてもらうこともありました。趣味も似通ったところがあったので、プライベートでもコミックマーケットに行ったりと、仲は良かったですね。

その後、大学休学中に加藤さんから起業の誘いがあったそうですね。その背景について教えてください。

元々勉強が得意だったので漠然と研究者にでもなろうかと考え、大学受験では研究が強そうなイメージのある京都大学を選んで入学したのですが、いざ具体的に自分の進路を考え始めるような時期になってみると自分が研究者として働くイメージがつかず、他にやりたいことがなかったので休学していました。
そんな状況の中、大学院に進学していたが当時休学中だった加藤から「暇なら一緒に起業でもしてみないか」と声をかけられたんです。それまでの関係値もあったので起業することに決めました。

実務未経験で起業することに抵抗はなかったですか?

そもそも他にやりたいことがなくて休学していましたし、時間にも余裕がありましたので、新たなチャレンジをすることに抵抗はなかったですね。
実際登記する前の2年間、準備期間としてお互いプログラミングを学習していました。
加藤はそれ以前から少しプログラミング経験がありましたが、人に指導できるほどではなかったので、お互いほぼゼロから一緒に勉強し始めたという感じでしたね。はじめは個人で掲示板やタスク管理のようなサービスを開発したり、加藤の先輩が立ち上げた会社からモバイル向けゲームの案件を受注していました。

あとは最初に声をかけていただいたベンチャーキャピタル(以下VC)からの提案に関しても、自分の調べた知識の中でいえばフェアな契約だと思えたので、あまり不安も感じなかったです。

少数精鋭で奮闘した創業期。VRが世に浸透していない時代、試行錯誤した末、本来実現したかったVR事業に原点回帰

2015年、創業当時について教えてください。

起業して最初の1か月間は、加藤と私の2人体制でした。加藤がフロントエンドとデザインを担当、私はバックエンドをメインに、データを扱うものであればロジックの部分などを担当していました。それから、エンジニア1名とデザイナー1名が参加し、4名体制になりました。

創業当時から「cluster」を開発していたのですか?

いえ、最初はいろんなタイプのプロトタイプを作っては壊してを繰り返していました。
創業前にVCに提案した事業アイデアは、複数人のアバターが同じ空間にいてコミュニケーションがとれるという現在の「cluster」のコンパクト版のようなものだったのですが、その当時まだVRデバイスが一般的に普及しておらず、それよりも次は動画サービスがくると言われていた時代でしたので、我々も創業時は一つの空間にアバターで集まって動画を視聴できたりと、アバターと流行りの要素を組み合わせたサービスを作っていました。
基本的に方向性は現在の「cluster」と同じ、仮想空間内にアバターで集まるというところからぶれませんでした。

起業してみたものの何を作れば成功するのかわからず模索していたこの半年間は大変でした。
手ごたえが感じられない中、ある時やはり最初にVCに提案したVR空間でサービスを作ることに勝算があるのではないかと立ち返ったんです。ここで舵をきれたきっかけは、ある意味開き直りでもありましたね。

現在の「cluster」の形で制作すると決めてから、どれぐらいでリリースされたのですか?

まず「cluster」の制作を決めてから1か月後の2016年2月に試作版を公開しました。
これまでのプロトタイプで蓄積されてきたノウハウがあったからこそ、公開までのスピードは早かったです。
その後、機能やデザインの刷新をふまえ、正式版を2017年5月にリリースしました。

その当時のエンジニア組織の規模感はどれぐらいだったのですか?

2017年シリーズAで2億円の資金を調達してから採用にも力を入れ始め、2018年にはチームメンバーは15名になりました。元々グノシーに在籍していた優秀なエンジニアが入社し、私はバックエンドから離れ、ネットワークのリアルタイム通信の作業をメインで担当するようになりました。加藤もプロダクト全体の構想期間や仕様を決めることに比重を置くようになり、互いに開発から少しづつ離れていきました。

CEOとCTO間での衝突が起きることはなかったですか?

めちゃくちゃありましたね(笑)加藤とは仲はいいですが、考え方や性格が似ているわけではないので、プロダクトに対してマーケター的思考とエンジニア的思考というところで意見が一致しないことは多かったです。
ただそういった場合は、一旦は加藤の方向性で進めることに決めています。実際に進めてみて上手くいかなくて、柔軟に方向転換することもありましたし、様々なケースがありましたね。

3つのバリュー「加速」「チャレンジ」「リスペクト」と11箇条の「Cluster culture」が徹底された上に成り立つ自由度の高い組織

現在の組織について教えてください。

現在、クラスターには正社員・契約社員・アルバイトを含めて220人ほど在籍していて、そのうち100人弱がソフトウェア開発部に所属しています。
開発部の内訳はエンジニアが約60人、デザイナーが10人強、プロダクトマネージャーが約10人、加えてQAやテスターといったメンバーで構成されています。
2021年までは、各役員がマネージャーを兼務し、それぞれの管掌範囲のメンバーをマネジメントしていましたが、2022年から機能別チームごとに、基本は各チームに1人ずつEMが所属するような体制に変えていきました。 

現在の私の業務は、プロダクトや技術部分に直接関わる機会はかなり減っていて、組織よりのことを考える時間や採用に費やすことの方が多くなりました。
 そして組織作りにおいては「加速」「チャレンジ」「リスペクト」の3つのバリューと、それをより具体化した11箇条の「Cluster Culture」を大切にしています。

バリューやカルチャーについてはどのようにして社員に浸透させていますか?

これに関しては結論言い続けるということしかないですね。
はじめはバリュー、カルチャーが書かれた張り紙をオフィスの至る所に貼りだしたりしてました。現在も従業員全員参加の全社会をオンラインで毎週実施しているのですが、そこでは毎週欠かさず加藤からバリュー、カルチャーに関する話題があがりますし、評価においてもクラスターカルチャーを体現しているかという項目が存在します。
また、誰かが加速に値するアクションを起こしたときは、Slackで加速スタンプを押したり、チーム内で褒め合う空気感を大切にしています。

エンジニア組織の働き方において自由度が高く、働きやすいと評判で退職率も低いとお聞きしました。どのような特徴がありますか?

そうですね、メタバース事業を展開していることもあり、メンバー全員が本名ではなくハンドルネームで呼ぶようにしていたり、オンライン会議にアバターで参加することができたり、特徴的な文化が存在しています。
顔出しが苦手な人にとってはアバターで参加できることで心理的安全性が保たれ、ストレスなく働けるとも言われています。

基本フルリモートで、月に1回全体出社の日を設けています。
またエンジニアは勤務時間の自由度が高くほぼフルフレックスですので、子育て中の方にも働きやすいと思います。女性だけでなく男性で育児中の人でも、子供のご飯を作ったり、食べさせたりするときに仕事を中断するなど、自由に作業時間を調整できます。
また、そういったことに対して社内から批判が起こることは絶対にありません。

とにかく自由度が高く、遊び心を否定しない組織ですので、中にはクラスター内で使用する自作ツールを作ってしまう人もいまして、Zoomにアバターを表示させるツールや、Slackで『草』っていうスタンプが押された投稿のみ流し込めるチャンネルがいつのまにか出来てたりします(笑)
実際エンジニア組織の離職率はかなり少ないです。

北海道や大分県から仕事をされている方もいらっしゃると聞きました。フルリモートで働く環境において、メンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか?

コミュニケーションを意図的に増やしていかなければという課題感はあります。
月一の全体出社日では、経費をかけて懇親会のような場を設け対面でのコミュニケーションを大切にしています。

またチーム内でのコミュニケーション活性化のために、週次の定例ミーティングで、パーソナリティーに関わるような話をする時間を設けています。
やり方はチームによって違いますが、例えば毎週ライトニングトークの担当を決め、フリーテーマで5分ぐらい話してもらいます。
純粋に趣味の話をする人や、自己紹介的な感じで話す人、興味関心のある技術について話す人がいたり人それぞれです。

あとは、チームを跨いだコミュニケーションを意図的に発生させるため、ランダムにメンバーを組み合わせ雑談する場を設け、新入社員が馴染みやすいよう心がけています。

そのような交流の機会はどのようにして発生するのですか?

エンジニアリングマネージャーが提案してくれることもあれば、自然発生することもありますし、人事部と連携して実施することもあります。
私自身クラスター以外の会社にいたことがないので、大手企業を見てきたメンバーから組織を活性化させるためにどういう施策がいいか、悪いかについてアドバイスや提案をもらいながら最終判断しています。

メンバーとのコミュニケーションにおいて、田中さんがCTOとして意識していることはありますか?

エンジニアは雑談の中からアイデアが生まれたり、好きなように働いているときにいい仕事ができる習性があると言われているので、雰囲気づくりを大切にしています。
個人的に意識していることでいうとSlackで意図的に不規則発言をするようにしていて、昨年末にSlackでの発言回数の多い人ランキングを調査したところ、TOP5までがエンジニアで私もその上位に入ってました。

時代の先端をいくアバター参加型面接の採用基準。

社内の会議だけでなく、採用面接でもアバター参加が可能だと伺いました。素顔がわからないまま採用することもあるのですか?

はい、最初から最後までアバターで参加される方もいますが、参加方法は自由です。アバターで参加するもよし、通常のカメラで参加するもよし、アバターと通常カメラ両方の画面を立ち上げて参加してもいいです。採用プロセスは構造化されていて、一次面接はエンジニア、2次面接はマネージャー、最終面接では我々役員が見ているのですが、一次二次はアバターで参加し、最終面接のみ通常カメラで参加する方もいます。

クラスターならではの採用システムですね。アバターを通して評価することは難しくないですか?

アバターを通しての会話でも意外とその人らしさというのが分かるもので、慣れている人はアバターを使った表情管理や話し方など、アバターを通してのコミュニケーションが上手なんです。今は実際の表情をほぼ完全にアバターに反映させられるようになっているので、アバターだから難しいと感じたことは今のところないですね。
逆にアバターで参加してきた方で「この人どういう人かわからない」と感じた場合は見送らせていただいてます。

 唯一困っていることでいうと、入社が決まって初めてオフィスに出社したときにアバターと本人が一致せず『この人誰だろう…』ってなることがあります(笑)

採用ではどのようなポイントを見ていますか?

一次二次では実務能力や技術レベルを見ていて、私が担当している最終面談の観点でいうと、カルチャーマッチや、仕事や技術に対するスタンスを見ています。
判断の方法は様々ですが特別見ているポイントとして、意思決定の機会の回数とその決定を下すまでの判断材料の質について質問することが多いです。
例えば、何かの技術選定をする際に、何人が参画しているプロジェクトで、どれぐらいの規模感で、納期がいつで、最終的に何を達成しなければいけなくてなど、決定を下すために考慮しなければいけない要素をどれだけ多く並べられて、その要素からどういうロジックで思考して意思決定したかという詳細まで語れる人が優秀であると思います。

10億人が利用するサービスを目指して。大きな価値を生み出すエンジニア組織にしたい。

CTOの責任領域は会社の規模によって変化するかと思いますが、現在の田中さんが思うCTOに必要な要素はなんだと思いますか?

前提として技術責任者として立っているからには、エンジニアからリスペクトされるレベルの技術力を持ち合わせていることは絶対的に必要だと思います。
あとは1人のエンジニアが実現できることってたかがしれているので、沢山のエンジニアで組織を作り、その組織で大きなものを作っていくことが重要です。組織からエンジニアリングする意識を持っておくのが必要かなと思っています。
場合によってはVPoEに任せている会社もありますが、今のクラスターの体制ではCTOが担うべきかなと思います。

最後に、CTOは経営陣として経営にも参加するので、ビジネスに対する理解をしておく必要があります。自分たちが展開しているサービスの市場感や将来性について語れるぐらいの知識は必要ですし、例えばクラスターを利用してくれている法人のお客様がクラスターに何を求めていて、何に価値を感じてくれているか、自社の営業がクラスタ―という商材を売り込む時にどのようなアプローチしているか、などビジネスの視点も持ち合わせていなければCTOとして立っている意味がないと思います。

今後CTOとして成し遂げたいことを教えてください。

私がクラスター社で担わなければいけないことは、エンジニア組織がより大きな価値を生み出せるようになることだと思っています。
創業時から私はCTOでしたが、当時は技術を極めたり、新しい技術を取り入れたりとエンジニアリングすることが面白いと感じていたので、組織マネジメントについて考える発想はありませんでした。それが、会社が大きくなり、仲間が増え、必然的に私に求められる領域が変化し、気が付けば組織自体をエンジニアリングすることが面白いと感じるようになりました。

加藤は「cluster」を10億人が利用するサービスにすると言っています。
必ず「cluster」をヒットさせて、世間から「clusterっていうイケてるサービスを開発している組織がすごい!」と評価してもらえるような組織作りをしていきたいです。

今後のクラスターとしての挑戦について教えてください。

来年から24年卒の新卒を採用することにしました。
現在のエンジニアメンバーは平均年齢が30代前半で、中途採用の人が多いんです。
というのも、10万人が同時接続できるというサービス自体が複雑で、システムも難しい技術を採用しているので、必然的に採用基準も高くせざるを得ないというのがこれまでの状況でした。
これまで教育の時間にコストを避けなかった我々組織にとって、新卒採用は新しいチャレンジだと思っています。

なぜ新卒採用に踏み切ったのですか?

ひとつは今の時代、大学生でも優秀なエンジニアが多いということです。
もちろん組織での開発経験はないのでそこはインプットさせる必要がありますが、特定の技術においては社会人のプログラマーよりも優秀だったりします。
既に24年卒の方で何名か採用しているのですが、学生とは思えない優秀な人がいます。
あとは、カルチャーマッチを重視しているというところで、新卒で入社した人ってある意味その会社のカルチャーの体現者になりやすいと思っています。
今後組織を拡大していくにあたり、そういった方が必要だと思っています。

我々と一緒にクラスターを大きくしていきたいと思ってくれる方の参加をお待ちしております。

\クラスターではエンジニアを積極採用中!/

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