ユーザーが全て。急成長中の「BASE(ベイス)」を圧倒的プロダクト視点で支えるCTOの思考法とは?

誰でも簡単にネットショップが作成できるWebサービス「BASE(ベイス)」を運営するBASE株式会社。本日は、ネットショップの開設実績4年連続No.1※1を獲得、ショップ開設数は、現在140万ショップ2を突破するなど急成長を遂げている同社で、2019年、28歳という若さでCTOへ就任し、成長の中核を担っている人物・川口氏へ話を伺いました。

※1:最近1年以内にネットショップを開設する際に利用したカート型ネットショップ開設サービスの調査(2021年2月 調査委託先:マクロミル)※2: 2021年3月4日時点のショップ開設数

オンライン取材に対応するBASE株式会社 執行役員 CTO 川口氏
川口 将貴|BASE株式会社 執行役員 CTO

1991年生まれ、東京都出身。大学卒業後、2013年ソーシャルゲーム開発会社に入社。サーバーサイドエンジニアとしてアバターゲームの開発に従事。その後同社の女性向けネイティブゲームの開発運用に異動しCocos2d-xを利用した開発を経験。2017年5月にBASE株式会社に入社。ショッピングアプリ「BASE」のバックエンド開発を担当し、2017年9月にライブコマース機能「BASEライブ」を開発。BASE Product Divisionのテックリードを経て、2019年7月に執行役員CTOに就任。

BASE株式会社について

貴社の事業内容を教えて下さい。

弊社が運営している「BASE」は、ものづくりをする個人・法人・地域活性を支援する自治体等の行政をはじめ、140万ショップにご利用いただいているネットショップ作成サービスです。初期費用不要、月額費用などの固定プランが無く、商品が売れた際に手数料が発生するシステムです。また、開設されたショップの販促をサポートするためにショッピングアプリも提供しております。

さらに、グループ会社のBASE BANK株式会社では、即時に資金調達できる金融サービス「YELL BANK」を提供、PAY株式会社では、オンライン決済サービス「PAY.JP」を提供。ネットショップを簡単に開設できるよう、様々なサービスを展開しております。

終わりがないインターネットの世界に魅了された

ここから、川口さんのキャリアについて伺います。初めてインターネットへ興味を持ったのはいつでしょうか?

小学生の頃、授業で初めてパソコンに触れました。それから、自然と家にあったパソコンを触るようになり、インターネットの世界にのめり込んでいきました。中学生の頃は、オンラインゲームの攻略サイトを見て、オンラインゲームのツールを作り始めたり、高校生になると、自らサイトを作成するようになりました。当時は、今のようにプログラミングスクールなどがない時代だったので、インターネット上のブログやコミュニティなどから情報収集をして、独学で学びました。

大学では、ネットワーク情報学部へ進学されていますが、大学生活はいかがでしたか?

私の学部は、インターネットについて広く浅く学ぶようなものでした。学ぶ内容は何にせよ、きちんと教えてくれる教授がいて、一緒に学ぶ優秀な先輩や同期がいる環境は初めてのことだったので、「ちゃんと学ぼう!」と身が引き締まったことを覚えています。

授業でもWEBサービスを自作することはありましたが、WEBサービスを作ることは、とても楽しかったので、授業以外でも色々作っていましたね。誰もサイトに来ないことはざらでしたが(笑)

基本、ゲームには終わりがありますが、インターネットはやることに終わりがないので、そこに面白さを感じていたんだと思います。

やるべきことをやるだけの人生はつまらない。自分のやれることを広げるため、周りを巻き込んでいった

BASE株式会社のオフィス風景
大学卒業後、ソーシャルゲーム開発会社へ入社されてますが、その会社を選んだ理由を教えて下さい。

正直、大学生の頃は、そこまで真剣にキャリアを考えていませんでした。しかし、興味がある分野はインターネットだったので、漠然とエンジニアのような職へ就くのだろうなと思っていました。その中で、一番最初に内定が出たところがソーシャルゲームの開発会社だったんです。面接での雰囲気も良かったですし、第一に、まだ働いていない状態で、色々悩んだとしても正解は分からないと思ったので、その会社へ入社を決めました。

入社後は、どのような経験をしましたか?

もともと組織や大企業は、インターネット的ではないのであまり好きではなかったんです。終わりがない世界をインターネットだとすると、会社に属することは、すなわち、できる範囲が限定されること。特に新卒は、出来ることも少ないのでさらにできる範囲が狭くなってしまうからです。

その中で、どうしたら自分の幅を広げることができるだろうと考えた時、まず周りの環境を変えることが得策だなと思ったんです。新しいことをどんどん提案していき、CIの導入、Gitへの移行など実行していきました。「これだけやっておけば良い」という人生はつまらないので。

もちろん、本来やるべきタスクが終わっていなければその提案も受け入れられませんので、自分のタスクを終わらせた上で色々と提案するよう心がけてましたね。

また、提案内容も、経験値や技術レベルにおいては先輩達に到底及びませんので、新しいものを中心に提案していました。当時、新しいものへの感度は負けていないと思っていましたし、特に若い頃なんて、インターネットで見た真新しいツールを入れたがる傾向にありますから、生意気な提案を沢山していたと思います(笑)

BASEでも、当時の川口さんのような提案は若手からありますか?

BASE BANKは、特に若手も多いので、積極的に発言が出てくる環境です。BASE自体も若いメンバーが増えていて、以前より意見が出やすくなっています。

今でも新しいことを導入することは推奨派ですか?

私自身、新しいことを導入することは推奨派です。しかし、人数が増えてくるとどうしても影響範囲が広がってきますので、全ての提案を受け入れることは難しいです。事実、メンバー2人にとって良い提案であっても、残り10人にとって良いものでなければ全体としてはよくないですよね。

BASEは、インターネットとサービス愛に溢れていた

その後、どのタイミングで転職を決意されたのでしょうか?

4年程在籍して、バックエンド、ゲームのクライアント、インフラを一通り経験し、最終的には開発チームのリーダーに近いポジションまでいきました。

そんなある日、波がなくなったな、と感じたんです。障害対応などもある程度できるようになり、自分の中で、仕事の速度が一定になってきたと感じ始めました。

そのうえで、どうせ転職するならば、違う業界に身を置きたいと思い、あえてゲーム業界は外し、プログラミング言語も絞らずに転職活動を行いました。基礎がきちんと学べていれば、どこでも何とかなるだろうと、割と楽観的に考えていましたね。

私は、仕事が趣味というタイプの人間で、1日の半分以上、業務やインターネットについて考えているんです。そのため、「自分が分からないこと」が多い環境の方が、新しい幅が大きいので、とても楽しいんです。

数ある転職先の中で、何故BASEを選んだのでしょうか?

当時のBASEは、全社で50名程。上場するか否かもよく分からない位の時期でした。

転職活動をする中で、BASEの他にもう1社内定をいただきました。どちらも、条件面はさほど変わらなかったのですが、BASEで働いている方々のサービスやインターネットへの愛が伝わってきたことが大きな決め手になりました。

当時BASEのCTOを務めていた藤川(えふしんさん)はもちろん、最終面接を担当してくれた代表の鶴岡とは、インターネットの話でとても盛り上がりました。インターネット好きの私としては、このような環境の方が居心地がよいだろうなと思ったんです。

対象が違うだけで、誰しもがユーザー視点を持っていると思う

転職後、最初はどのようにプロダクトに携わっていきましたか?

ユーザーからのお問い合わせは、基本的にカスタマーサポートが対応していますが、エンジニアに聞かないと分からない技術的な質問は、全エンジニアに共有される仕組みになっていました。

ユーザーの声は、普通に開発しているだけでは分からないことを知ることができるため、プロダクトを知る手段としてはとても有効でした。そのため入社当初は、積極的に返信対応をしていましたね。

川口さんは、サービスへの関心がとても高いんですね!

サービスを提供する企業にとって、そのサービスを使ってくれているユーザーが全てですからね。技術を手段として使うことは有効ですが、もともと技術自体や会社のスケールには興味がなかったです。今の立場となっては、会社を大きくして、サービスとどう同期させるかという観点から会社のスケールには興味を持つようになりましたが。

そのようなプロダクトファースト(ユーザー視点)を持っていないエンジニアも多いと思いますが、川口さんはどのようにしてその視点を身に付けていったのですか?

私の場合は、本当に技術そのものが好きな人に比べて、根深い部分の技術の知識にはあまり興味がないんです。もちろん、仕組みを利用するのに必要な前提知識は理解しますが、その仕組みを作ること自体には興味がなくて。

一方、「技術思考」と呼ばれるスペシャリストの場合は、その仕組みとなるフレームワークを作ることに興味があります。彼らにとって、サービスがそのフレームワークで、ユーザーが我々エンジニアというだけで、同じタイプの人間だと思っています。対象が異なるだけで誰しもが誰かのユーザー目線に立っているのではないでしょうか。

他人に期待しないこと。コミュニケーションもエンジニアリングの1つ

周囲を上手く巻き込んで何かを推進する時、川口さん自身が気を付けていることはありますか?

1つ挙げると、「他人に期待をしないこと」ですかね。「こうやったら喜んでくれるだろう」「こうやってくれるだろう」という期待は、押し付けでしかないんです。

例えば、サービス開発において、サービスが思い通りに動かない場合は、作った側に何らかの問題があると考えられるのに、社内の活動においては何故か他人のせいにしてしまいがちです。期待した通りに人が動いてくれなかったとしても、社内の人をユーザーと仮定するなら、ユーザー目線に立っていなかった自分のせいだよね、と思うことが大事だと思っています。

いつ頃からそのような視点を持てるようになったのでしょうか?

新卒の頃に身に付きました。相手にきちんと情報が伝わっていない場面では、上司から「何故、伝えてないのか?」と言われました。当時は、伝えているのに理不尽だな、と思っていましたが、伝わらなければそれはコミュニケーションを取っているとは言わないと理解するようになってからは、伝え方を工夫するようになりました。

口頭で伝えたものをSlackでも残したり、どの情報をどの位で伝えれば効果があるか、情報に濃淡をつけたり。結局、全ての情報をオープンにしたところで伝わらなければ意味がないですからね。

また、私は、コミュニケーションも1つのエンジニアリングだと感じています。エンジニアは、「良いメソッドの定義」、「良いコードの定義」のように定義することは好きなので、コミュニケーションの濃淡もそのように考えて楽しみながらやっています。

また、最近は、言い方も気を付けています。入社当初の1エンジニアの私の発言と今CTOになった私の発言では、例え同じように伝えても、受け取る側は、萎縮してしまう可能性があるので、前より気を付けています。

先日も、メンバーを萎縮させないように指摘しようと、「これは怒ってるわけでも詰めているわけでもないんだけど…」と前置きを入れて話をしました。そうしたら、「逆に怖いです」と言われて。まだまだコミュニケーションって難しいなと思いながらやっています(笑)

象徴的存在のCTOからの世代交代。初めは戸惑うことも多かった

2019年7月、前任の藤川さん(えふしんさん)からCTOを引き継ぎCTOへ就任していますが、その背景を教えて下さい。

えふしんさんは、やはり会社の象徴のような存在でした。そのため、メンバーレベルでは、CTOが替わるなんてことは全く想像していなかったと思うので、発表した時はとても驚かれました。

一般的なCTOという役割とは異なるかもしれませんが、弊社の場合は、執行と経営を分け、今まで執行をやっていた人(=私)をCTOと名付けることになりました。

最初に藤川からCTOの打診を受けた時は、採用や組織、情報システムなども含めた当時の藤川の役割全てを引き受けるのかと思ったので、そうなると開発が一切できないなと思い、断わりました。それから再度、私が現場の技術の責任者、藤川がそれ以外の責任を持つ形で提案があったので引き受けることにしました。

実際、CTOになってみていかがですか?

私自身はエンジニアから、いきなりCTOというポジションに就いたので、キャリアのグラデーションがなかったんです。そのため、最初はとても戸惑いました。2019年、クックパッドさんのイベントで、同時期にCTOに就任したコネヒトの伊藤さんが、バリューや制度を作ったりしている話を聞いて、これがCTOというものなのかと驚きました。

しかし就任して1年ほど経った今は、会社によってレイヤーもフェーズも違うので、前ほど焦る必要はないと思うようになりましたね。他の会社がやっているから、やらなければというのではなく、自分たちの組織を成長させるために何をやっていくか考えることがCTOにとって大事だと思っています。

前任CTO藤川さんから、学べたことはありますか?

良くも悪くも、人の話を聞いていないところです(笑)藤川は、真に受け止めすぎず、受け流すバランス感覚が良いです。一方で、経営や採用などの重要なテーマについてはきちんと全体を見渡して判断しているのを見ると、適切な距離を取れているんだなと感じます。私の場合は、全てまともに受け止めすぎてしまい、その面でしか物事を考えられないところがあるので、見習いたいですね。

日本、そして世界へ。圧倒的に強いプロダクトにするため、まだまだやることは山積みです

現在のBASEのプロダクトにおける課題を教えて下さい。またどう解決していく予定かも合わせて教えて下さい。

ユーザー数・アクセス数が急増したことにより、性能の限界みたいなものを感じはじめました。今は対策を入れたため、ある程度落ち着いているように見えますが、これを超えるようなことが起きてしまったとしたら、今のアプリケーションアーキテクチャと組織構造では厳しいという状況です。

そのため今後は、中長期にわたりアーキテクチャの成長を牽引できる人を増やしていきたいと思っています。加えて、今までBASEでは、モニタリングツールをあまり積極的に利用していなかったのですが、今後は、アプリケーションモニタリングを使用するなど教育へ投資していきたいです。

また、コロナ禍の今、リモートワーク中心の勤務体系ですが、オンボーディングにはまだまだ課題が残っています。フレームワークを移行するなどの大きな改修が発生した時、きちんと仕組みを理解しなければなりません。その際は、代表含め、長く働いている方の知識を引き出していかなければいけませんが、それを実行する時、リモートの環境下はとても大変なんです。特にコロナ禍で新しく入ってきたメンバーは、対面で築き上げた信頼貯金がないのでとても大変だと思っています。なので、コロナ後も、週5出勤はないにせよ、オンラインだけで完結するのは難しい場面もあると思うので、オンラインとオフラインの手段を適切に使い分けていけたらと思います。

最後に、これからCTOとして川口さんがBASEで成し遂げたいことを教えて下さい。

「BASE」というサービスが、圧倒的に強くなって欲しいですね。ユーザーの選択肢の1つに必ず入り、海外のユーザーからも使われる、そんなサービスになったら嬉しいです。

そのためには、本来サービスを必要としている人々に、きちんと認知を行き渡らせることが重要だと思います。そしてそのプラットフォームを必要としている人がよりかんたんに活用できるようにきちんと耕しておくことが、私たちエンジニアの責任だと思っています。

よく面接などで、「もう完成してる」「やることないんじゃないか」など聞かれますが、まるで完成していません(笑)現状、やることも山積みですし、まだまだ完成していないプロダクトなので、是非一緒にチャレンジしたいという方は、お話しましょう!

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