ヘルステックベンチャー カラダノートVPoEが語る、計画的組織改革の裏側

株式会社カラダノート 執行役員プロダクト本部長 堀内 栄一

大学在学時からエンジニアを目指し、大学院でコンピューターサイエンス(情報工学)の修士号を取得。発電プラント関連の動特性モデルのシミュレーションからe-learning系のベンチャーでWebセミナーシステムの開発責任者およびエンジニアリングマネージャーを経験後、2020年7月にカラダノートに入社。開発組織が整備されていないなか、カラダノート初VPoEとして開発組織の整備に取り組み、開発組織の成長に貢献。

カラダノ―トについて

 

 

御社の事業内容について教えて下さい。

弊社は「家族の健康を支え笑顔をふやす」をビジョンに掲げ、約200万世帯の家族データを基点にファミリーデータプラットフォーム事業を展開しています。
提供実績10年以上の子育て支援アプリシリーズのうち陣痛間隔を計測する「陣痛きたかも」は、ママの約9割にご活用いただいております。
ToC以外には保険代理店やハウス―メーカーなどの企業様ともお取引があります。
アプリ内にキャンペーンサイトを設けており、保険や住宅に関するアンケートに同時に回答していただいております。その結果を元に子育て世帯や結婚、出産と共に保険や住宅を検討されているユーザー様を企業様に紹介し成果報酬を上げる、送客型のビジネスモデルで運営しておりました。
2020年上場以降、自社でもユーザー様に直接付加価値を提供しようということから、お金や住まい関連などアプリに留まらない自社サービスを提供し、事業の進化に取り組んでいます。

就職氷河期の対策として情報学部進学。初めて学んだC言語と自身の才能の思わぬ結びつき

堀内さんがエンジニアを目指したきっかけを教えてください

子供の頃から自宅に両親の仕事用のPCが3台あり、家族でタイピングゲームで競って遊んでいました。
きっかけは高校生の時、当時就職氷河期で、テレビをつければ就職活動に嘆く学生のニュースが頻繁に流れていたんですよね。ですが時代はITバブルで、パソコンが使えれば職に困らないという印象が当時の私にはありました。
当時やりたいこともなく進学先に迷っていた私は、パソコンに詳しくなれば職にも困らないだろうという気持ちで情報学部に進学しました。

情報学部に入学してからはいかがでしたか?

入学して最初に学んだのがC言語だったのですが「これめちゃくちゃ面白いんじゃないか…」と電流が走ったのを覚えています。数学が得意で、ぷよぷよや将棋などパズルゲームが好きでしたので、少し原理が似ているところもあり、適性があったのだと思います。
早い時期に自分が没頭できるものに出会えたのはラッキーでした。

高校時代は勉強に興味がなかった私ですが、大学の特例制度を活用し無償で大学院に進学することができました。大学院ではC言語を用いて、交通流のシミュレーションの研究に没頭し、コンピューターサイエンス(情報工学)の修士号を取得しました。

2010年に大学院を卒業し、エンジニアとしての基礎を身につけるため、学内からの卒業生も多い中堅のSIer企業に就職しました。

原発の訓練用システムというニッチな開発からWeb開発まで幅広いエンジニアリング経験を積み、プロダクト、チーム、開発までの包括的なマネジメントも経験

SIer企業ではどのような業務を行っていましたか?

主に原子力発電所の訓練用シミュレーションプログラムをFORTRAN77という言語を用いて開発していました。
発電所には中央制御室という部屋があり、そこで多くの作業員が運転作業を行っています。ですが、訓練時には実際の発電所は使用できません。そのため、訓練用の中央制御室を作り、発電所の挙動を模擬したシミュレーションプログラムを開発するというものでした。

その後、なぜSIer企業を退職されたのですか?

私自身はこの開発がとにかく面白くてこの仕事を続けていたのですが、FORTRAN77は1977年にできた古い技術なんです。将来性を考えるとこの仕事を継続することは現実的に厳しいと感じました。
趣味でWeb系の技術に触れていたこともあり、新たな経験を求め2014年8月に退職し、3か月後にはeラーニングの自社サービスを手掛けるロゴスウェア株式会社に転職しました。

ロゴスウェア株式会社ではマネジメントを経験されたそうですね。

シリコンバレーの大手企業でマネジメントをされていた社長の元で、自社サービスの開発ノウハウを学べた貴重な経験でした。最初はPythonとDjangoを用いてバックエンドの開発を担当していましたが、その後1年間は新規開発のプロダクトマネジメント、そして2年間はライブセミナーシステムの開発責任者を担当しました。

当時はいわゆるプレイングマネージャーとして、プロダクトのマネジメントから、チームメンバー7人のマネジメント、開発に至るまで幅広く担当しており、そのためハードな仕事をこなしていたと思います。

プレイングマネージャーからVPoEへ。入社前から入念に準備されたエンジニア組織変革計画

その後、4社目で現在のカラダノートにVPoEとして入社されたのですね。きっかけはなんでしたか?

マネジメントは組織において大きな影響をもたらす重要な専門スキルですが、甘く見ていたところがありました。プレイングマネージャーをしていた際、プレイング作業が多くを占めてしまい、マネジメント業務に充分な時間を割けず、気づけば自分が組織のボトルネックになっていたんです。

改めてマネジメントを見つめなおす必要があると感じ、マネジメント職でストレッチが求められる募集を中心に転職活動を始めました。いずれの転職でも言えることですが、専門スキルを活かして企業に貢献し、結果その経験が自分のキャリアに繋がればと思いました。

当時子供が2歳ぐらいで、自分の身の回りの関心ごとである子供や育児の分野でコミットできる企業がないか調べたところ、カラダノートでVPoEの求人があるのを見つけました。
元々私が育った環境が2世帯で、家族6人で暮らしていたこともあり、家族をテーマにする事業への共感が高かったです。

マネージャー職を募集されていた当時のカラダノートにはどのような課題があったのですか?

組織面では、開発スピードを上げ、円滑に回せるようにしてほしいという要望がありました。システム面では安定性を維持するための改善が求められていました。

当時のカラダノートのエンジニアは3人。開発がうまく回っていなかった主な要因は、エンジニアがビジネスチームが抱える本質的な課題を掴めておらず、要望を受け取ったまま過度に応じすぎており、その結果、仕様や設計がちぐはぐになっていき、改修が難しくなっているというところでした。もう少しエンジニア側で取捨選択できるよう、チームを立て直す必要がありました。

安定性に関しては、Laravelでできた複数のシステムやメディアが無理やり1つのシステムに統合されており、システムに負荷がかかるとすべてダウンするようになっていました。実際、毎日夕方になると頻繁にシステムが停止するエラーが上がっていました。

開発速度と安定性の課題はどのように改善していきましたか?

入社直後、アジャイル開発を導入し、最初のスプリントは入社の翌週には実行していました。この取り組みにおいて、事業部門と経営企画のマネジメント層には、それぞれアジャイルに関する書籍を渡して、読んでもらいました。

2023年4月には大規模なリプレースを実施しました。
キャンペーンサイトでは、氏名やメールアドレス等の個人情報入力ページから次に進むと、アンケート入力ページが表示される仕組みになっています。
このシステムでは、入力された個人情報にもとづいてアンケートの質問内容を動的に変更し、最適なアンケートを表示させる必要があり、広告システムに近い複雑さがありました。
質問の条件変更や新しい選択肢の追加が発生するたびに不具合が多発し、開発スピードが低下していました。

これを解決するために、収益が最大化できるようアンケートを動的に出し分ける全く新しいアルゴリズムを構築し、全面的なリプレースを提案しました。決裁を得てから約半年でリプレースを完了しました。
現在新しいシステムはスムーズに稼働し、問題の少ない運用が実現されています。

VPoEとして入社する際、既存メンバーからの信頼を得るため、また円滑に課題解決に取り組むにあたって意識されたことはありますか?

入社前から準備し、主に3つ意識して行ったことがあります。

まず入社前にWebエンジニア3名とそれぞれ2回ずつ、経営企画の方と1回、計7回1on1を実施しました。
現場の状況や各メンバーの業務内容、スキルセットを把握するためです。多角的な情報収集を通じて、入社後のマネージャーとしての自分自身の動き方、どう会社を変えていくかについてのアプローチを事前に考えることができました。

入社後はあえて遠慮せず、積極的にコミュニケーションをとるよう心掛けました。

それから、入社翌月の2020年7月「JBUG 東京」(Backlogユーザーによるコミュニティイベント)に登壇し、1か月で開発手法をアジャイルに変えたことについて発表しました。
この登壇は、実は入社前から戦略的に計画していました。何よりも活動そのものや実績を出すことが、メンバーから信頼される近道だと考えていたからです。その結果、視聴者投票で一位を獲得し、これがメンバーから大きな信頼を得る一助となったかもしれません。

カラダノートの現在と今後の展望。技術的視点だけでなく、ビジネス視点でも見れるエンジニア組織に成長させたい

現在の堀内さんの業務について教えてください。

基本はエンジニアチームのマネジメント面を担いつつ、時期によって様々な側面に注力しています。
最近の業務内容では、アプリの収益性を高める施策を考えるためのセンターピン探しが全体のおおよそ5割を占めており、それに加えてインフラ業務やキャンペーンサイトのディレクションを行っています。

モバイルアプリからキャンペーンサイトに導線があり、月間申込者数の目標をエンジニアチームでも共有しています。マーケティング的な視点も見る必要がありますので、日々アクセス解析ツールを活用し、モバイルアプリのインサイトを探し、改善できそうな箇所を開発に落としています。

また、ここ最近までは当社のアプリ『陣痛きたかも』の新規機能追加にあたり、LLM開発に注力していました。
1月10日にAIチャット機能をリリースし、妊婦さんからのお悩み質問に対し、助産師が監修したコンテンツや当社のメディアに蓄積されている豊富な情報の中から最適な回答を提供することができます。

カラダノートの組織について教えてください。

エンジニアはWebエンジニアが正社員、業務委託の方含め6人。
モバイルのエンジニアが正社員が3人、業務委託の方が3~4人在籍しています。
オフショア開発も活用しており、新規の開発以外の保守的な作業を委託しています。

働き方については会社のバリュー、ミッションにもとづいて決めています。出社は週に2~3日程度で、コアタイムを11時〜15時としたフレックス制度を導入しています。社員皆、第一に健康であることを大切にしているので、社内に喫煙者はいません。

 

また、FFミーティング(フィードフォワードミーティング)を週に1回設けています。
ここでは、個人が目指したい領域を会社がサポートできるかというテーマではなく、主に自分たちが達成するべき目標の打ち手や会社に貢献するために今できることは何かというテーマで話します。私自身、会社や組織へ貢献した結果が自己実現やキャリアにつながると思っています。

マネジメントをする上で気を付けていることはありますか?

個を見ないようにしています。
メンバーごとに接し方を変えることなく、誰に対しても一定の感情で接し、私自身の感情も極力出さないよう意識しています。

どんな人材がカラダノートにマッチしますか?

好奇心旺盛で何にでも興味を持ち、楽しみを見出すことのできる方は相性が良いと思います。
弊社のエンジニア陣は、技術的な視点だけでなく、ビジネスにも理解を持つエンジニアが多数在籍しています。エンジニアとビジネスサイドのメンバーとの間で、日々業務に関するコミュニケーションが行き交います。技術だけでなく、マーケティングやビジネス領域にも興味がある方は、非常にマッチしていると思います。

また、子育てを経験している方々も大歓迎です。事業の幅が広いため、入社当初は業務知識のキャッチアップに苦労するメンバーが多いのですが、子育て経験をお持ちの方は、その経験が業務知識に直結します。

今後堀内さんがカラダノートで成し遂げたいことはなんですか?

カラダノートのサービスをより多くの人に認知してもらい、会社を一層拡大していくことが目標です。
また、大手企業と連携しサービスを提供することで、単独で進めるよりも大きな影響を生み出せると考えています。これからも新たな挑戦を続け、カラダノートの成長に寄与していきたいと思います。

これらを実現していくためにも、現在SREの領域に強い方や、エンジニアリングマネージャーができるシニアクラスのエンジニアを積極的に募集しています。

 

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