クラウド会計ソフトシェアNo1のCTOが語る、開発組織の創業~拡大期

freee株式会社 横路 隆 CTO

Ruby City 松江育ち。2010年、慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。学生時代よりインターンで、ビジネス向けシステム開発に携わる。ソニー株式会社を経て、2012年freee株式会社を共同創業。

freeeについて

御社の事業内容について教えて下さい。

当社は、「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、だれもが自由に自然体で経営できる統合型経営プラットフォームの構築を目指してサービスの開発及び提供をしております。

2012年に当社創業以降、全自動のクラウド会計ソフト「クラウド会計ソフトfreee(現 freee会計)」、「freee会社設立」、「freee人事労務」などのサービスを提供。有料課金ユーザーは約38万事業所※1、クラウド会計ソフト市場ではシェアNo.1※2を獲得。個人事業主や自営業のバックオフィス業務に対する負担軽減に貢献しています。

※1:2022年6月末時点の有料課金ユーザー企業数(個人事業主含む)

※2:2022年8月 リードプラス「キーワードからひも解く業界分析シリーズ:クラウド会計ソフト編」

パソコンで音楽作りに没頭した中高生時代。徐々にパソコンそのものへ関心が移っていった

最初に横路さんがインターネットやパソコンに興味を持ったきっかけを教えてください。

昔から好奇心旺盛な性格で、本を読み新しい情報に触れることが好きな少年でした。中高生位になると、家にパソコンが来たので、インターネットを使いさらに色々な情報を調べるようになりました。当時の私は、音楽に熱中していたため、パソコンを使って作曲などもしていました。

大学受験の時期には、「パソコンがどのように動いているのか知りたい」と徐々に音楽作りからパソコンそのものに関心が移り、情報系の学部のある大学へ進学することになりました。

その後、エンジニアになるまで、大学時代をどのように過ごされましたか?

生まれ育った島根を離れ、上京。大学では、コンピューターサイエンスを学びながら、インターン先でスモールビジネス向けのツールを作成していました。

私が生まれ育った島根県松江市は、Rubyの父・まつもとゆきひろ氏の活動の拠点としても知られており、町としてITに力を入れていましたので、夏休みには、研究室の仲間を誘ってRuby合宿に参加したこともありました。一泊二日でサービスを作り切るようなハッカソン的なイベントで、ここで沢山のコードを書く人たちと知り合いました。

その中で、エンジニアを職業として意識するきっかけは何でしたか?

転機になったのは、夏休みに実家へ帰省した時でした。私の実家はお菓子屋さんを営んでいるのですが、ある時、「仕入れや売上を管理することが面倒くさいんだよね」という話を聞きました。

そこで、私は、簡単なプログラミングを書いて管理するツールを作りました。すると、その時、お小遣いとして5万円貰えたんです。「いつもお小遣いは5,000円くらいなのに、その10倍も貰えるなんて、そんなに価値があることなのか」と、思ったことを今でも覚えています。

この出来事は、私にとってプログラミングを書くことが身近な人たちを助けたり、社会貢献になるのだと感じた最初の体験でした。

新卒でソニーへ入社。リーマンショックの影響で、仕事量が倍増する中、組み込みエンジニアとしてリリースに尽力した

大学卒業後は、どのようなキャリアを歩みましたか?

2010年、大学院卒業後、ソニーへ入社しました。コンピューター全般が好きだったこともあり、ものづくりをしているメーカーの仕事に面白みを感じたことが入社の理由です。

ソニーにいた約2年間は、組み込みエンジニアとして、写真や動画を撮影したりするコアのミドルウェアの担当をしました。

当時、ソニーは新アーキテクチャのカメラのミドルウェアを開発していました。カメラ機器には、サイバーショット、ハンディカム、業務用の機器など色々ありますが、それらのソフトウェアを全て共通のもので作るというプロジェクトがあり、そのリリースの1~2年前にジョインしました。

私が入社したのは、リーマンショックの次の年。大幅な人員削減がおこなわれ、1人で2人分の仕事をすることになりました。リリースこそ間に合いましたが、1日中クタクタになるまで働くような生活で2年間を過ごしました。

入社から2年でソニーを退職。2012年にfreeeを創業されていますが、創業までの経緯を教えていただけますか?

2012年4月にソニーの同期の繋がりで佐々木(現 freeeCEO)とお会いしました。

実家で美容室を営む佐々木と実家でお菓子屋さんを営む私は、中小企業を支援したいという思いが合致していたため、すぐに意気投合しました。

それから、ゴールデンウィークに試しに2人でプロダクトを作ってみたのですが、なかなか良いプロダクトができまして。それから、毎週1回、仕事終わりに佐々木の家に数人集まって話し合いをするようになり、最終的に私と佐々木の2人で7月にfreeeを共同創業しました。

佐々木さんと起業を決めた、決め手は何だったのでしょう?

佐々木はマーケター出身だったので、最初に会った時は、プログラミングを書けませんでした。しかし、「1か月間、プログラミング勉強してみるわ」と言って別れ、次に会った時には、プログラミングを書けるようになっていたんです。佐々木のこのビジネスに対する本気を感じました。

ソニーという大企業からの起業、怖さはありませんでしたか?

最初に「鳴かず飛ばずだったら、1年で辞める!」と期限を決めていたので、走り切ってみようという気持ちの方が大きかったです。

また、当時私が住んでいたのは4畳半ほどの独身寮で、そこに収まる位のものしか持っていなかったので、たとえ全て失っても、痛くもかゆくもないなって(笑)それも、すぐ決断できた理由だと思います。

創業期は、CEOと二人三脚で開発に着手。プロダクトローンチに向けて開発に全力を注いだ

創業当初はどのような開発体制でしたか?

創業当時は、佐々木のマンションで佐々木と2人で、朝の9時から深夜3時くらいまで開発していました。それから、同年10月に社員第1号として平栗が入社して、3人体制になりました。

年末にかけて、スタートアップピッチコンテストに出る準備や資金調達を進めていき、佐々木は少しずつ開発から離れていきました。きたる3月の「クラウド会計ソフトfreee(現 freee会計)」ローンチのタイミングで、完全に佐々木は開発から抜けました。

当時、佐々木さんと意見が合致しないことはありましたか?

大きな衝突はなかったように思います。

毎日、深夜2時位までクタクタになるまで仕事をし、ラーメン屋で反省会して、深夜3時位に解散するという生活だったので、言い争う余裕もなかったです。

一度、「パブリックローンチ日を3人で決めた」と佐々木が言っていて、私と平栗は、全く覚えておらず、「そんなことコミットしていない」と、少し言い合いになったことはありますが、本当、その位、些細なことしかないですね(笑)

freee成長期、開発→組織作りと優先順位が変化。マネジメントに何度も失敗しながら、チームで良いプロダクトを作る大切さを学んでいった

2022年8月ファクトブックより抜粋
創業期は3人体制でしたが、事業の成長に合わせて横路さん自身のやりべきことはどう変化していきましたか?

創業当初は、プロダクト作りが一番重要だったため、プロダクト作りに注力してきましたが、会社が大きくなるにつれて、採用やチーム作りなど開発以外のことの重要度が上がってきました。けれども、当時の私は、その変化にうまく対応しきれなかったように思います。

当時は、どのような進め方でしたか?

最初の10名位までは、ミドルクラスのエンジニアを採用しました。当然、私より年上でキャリアも長い方だったので、「こういうことをやりたい」というのを伝えて、キャッチアップしながら進めていました。

横路さん自身が変化するようになったきっかけはありましたか?

平栗の存在が大きかったです。

2015年頃は、エンジニア組織は30名程。2つのチームに分け、それぞれのチームを私と平栗がみていました。その時、隣で平栗のチームを見ていたのですが、とても良い雰囲気だな、と。平栗のマネジメントスキルの高さを実感するとともに、自分自身もこのままではいけないと思うようになりました。

私は、もともと人よりコンピューターが好きというギークタイプの人間なので、何回か失敗しました。その度に何度も挑戦させてくれた平栗には、本当に感謝しています。

良いプロダクトを生み出して世の中を変えていくためには、良いチームワークで作るということが重要だ、ということを平栗から学んだと思います。

マネジメントにおいて、平栗さんのすごいところはどこですか?

平栗の「人と向き合う姿勢」がすごいな、と思っています。

プロダクトでお客さんに価値を届けるということはもちろん大切ですが、平栗は、ROI度外視で日々一緒に働くメンバーと一人の人間として向き合うということができるタイプの人間です。心の底から「メンバーたちが1人の人間として幸せになってほしい。」と感じている一方で、「会社としてこういう方向に向かうんだ」と推し進めていく推進力があり、そのバランス感覚がとても良いんです。

上場準備期。品質担保に努めたり、ゴールから逆算して中長期的な視野で仕事をするようになった

急成長する中で、プロダクト開発の考え方は何か変わりましたか?

2018年頃までは、スピード重視でプロダクトをリリースしていたので、今よりも障害が起こっていましたし、サービス全体を数時間止めてしまうこともありました。

同年の10月末、日経新聞に大きく取り上げられたことがありました。「我々、いつの間にか社会のインフラになっていた」と実感したことが大きな転機になり、それからは「社会インフラとして、最低限品質を仕組みで担保できるようにしよう」と、品質担保へ舵を切りました。

品質を担保するために、どのようなことをおこないましたか?

技術面では、基盤の整備や採用に投資を始めました。

事業もどんどん伸びて、新しいプロダクトも複数リリースしているような状況下で、目指すべきプロダクトのビジョンを最短で実現できるようにするため、そこへの投資は不可欠でした。

その上で、人が増えても開発効率が落ちないようにしたり、人がいればいる分だけスピードアップしていける組織でないといけないため、中長期的な技術戦略も必要になってきました。年間の技術指針を立て、逆算して半年、1年、3年で何をやるべきか落とし込みました。

組織面では、マネージャーofマネージャーという役割ができたタイミングでもありました。どんどん新しいメンバーが増えてくる中で、組織としてきちんと走れるようにするためです。

当時、エンジニア組織は100名規模でしたが、平栗は、エンジニア全員と1on1を実施していました。「一人一人の名前を知っていて、声をかけられる環境は大事だ」と言っていましたが、今思うとその平栗のケアがあったからこそ、拡大した今でも変わらずフラットなエンジニア組織が実現できているのだと思います。

ボトムアップなfreeeの開発組織。採用活動や情報発信も、エンジニア一人一人が積極的に取り組んでいる

freeeエンジニア採用ページより抜粋
ここからはfreeeの組織について詳しくお伺いします。freeeの開発文化を作成された背景を教えて下さい。

2016年頃、「freeeのエンジニアの強みってどんなところにあるだろう?」と、話が上がり、言語化することになりました。

現在公開しているfreeeの開発文化は、ボトムアップで作成しました。最初は、エンジニア全員が集まって、半日位グループワークをおこない、最後にみんなで擦り合わせをおこなう形で作りました。

また、freee Tech night、Youtubeなどで技術の発信も積極的におこなっていらっしゃいますね。

2017年位から発信を始めて、特にここ1年半は、社内の知見を社外に発信することを強化しています。

最初は、ボトムアップで有志がやっていましたが、さらに推進力を高めるために、現在は、エンジニア組織の中にエンジニアリング企画チームを作りました。

発信については、会社としてどのように評価しているのでしょうか?

「採用活動にこれくらいコミットしてくれました」などは評価に盛り込まれますが、評価されるからやるというより、良い発信をして良いエンジニアを採用したいという気持ちが大きいと思います。

その根源には、自分たちがfreeeでやっていることに対して誇りを持っていること、「自分たちの仲間は自分たちで採用する!」という強い気持ちがあると感じます。

また、情報発信は、会社のカルチャーを自分の言葉で説明できるようになったり、自分たちの業務に今、何が必要かを言語化する良い機会にもなっています。

エンジニア一人一人がfreeeで働いていることに誇りを持てる、そんな組織で在り続けたい

現在の横路さんの役割を教えていただけますか?

取締役の仕事が1割位で、残りが執行です。執行の中でCTOとしての仕事が半分、あと半分が組織マネジメントです。

当社は、大きく3つの部署に分かれています。

1つ目がコアプロダクトを作る本部、2つ目が次期プロダクトを開発する本部、3つ目が横断で基盤を作って提供する本部です。それぞれの本部にVPoEを置いていますが、私は、3つ目の基盤のチームのVPoEを兼任しているので、基盤全体のレポートラインも見ています。加えて、基盤の中で、部長不在のところもあるので、その下の課長の部分も兼務したりと、最近は、組織マネジメントの役割を担うことが多くなっています。

最後に、横路さんがfreeeで成し遂げたいことを教えて下さい。

まず、会社として、「スモールビジネスがしっかり活躍できる世界を実現したい」という思いは変わらずあります。その中で、エンジニア組織を、freeeがテクノロジーでスモールビジネスを変えていくのかを考え、そこにプライドを持って取り組める組織にしたいと思います。

働いているメンバーが、「自分の会社のTシャツを着たくない」という状態にはあまりしたくないですからfreeeで働いていることに誇りを持てる、そんな会社で在るために、今自分ができる精一杯の仕組みづくりに取り組んでいきたいです。

\freeeではエンジニアを積極採用中!/

エンジニアの新卒採用も実施しています

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