不動産×テックで業界の変革へ挑む企業のエンジニア組織づくりとは?

高松智明(たかまつ・ともあき)|Housmart 取締役CTO

早稲田大学理工学部 修士課程卒業。卒業後、楽天株式会社に入社。5年間、同社が持つ数千万のユーザに対するレコメンド広告システムの開発や、機械学習を用いたユーザの広告反応の予測など、ビックデータを応用した広告・マーケティング関連のプロダクト開発を経験。その後、北米の広告系子会社における日本でのシステム責任者を兼任する。2016年、株式会社Housmartに入社。CTOとして、プロダクト全体のディレクション及び企画・開発を行う。エンジニアとしては主に独自の不動産データベースの構築や、機械学習・ディープラーニングを用いた不動産価格推定システム、物件のレコメンド機能の開発を担当。

大学院時代、
スタートアップで働きたいという思いからIT業界へ飛び込む

理工学部修士課程卒業後、将来スタートアップ企業で働きたいという思いから楽天へ入社。5年在籍のうち、最後の1年間はアメリカの買収した会社とのブリッジエンジニアとして日本のシステム責任者を兼任。2~3名体制のマネジメントを経験したのち、スタートアップ企業ハウスマートへ飛び込む。現在は取締役CTOとしてハウスマートのエンジニア組織をリードする高松氏に、CTOになるまでの経緯とチームのマネジメントについて伺いました!

スタートアップ企業のハウスマートに入社~取締役CTOになるまで

2016年にハウスマートへ入社したきっかけを教えて下さい。

代表の針山も前職が楽天であり、そのつながりで土日を利用してハウスマートのシステム開発のお手伝いをしたことがきっかけです。2015年の夏にはじめての資金調達ができたという話を聞いて、そろそろお給料をいただけるような体制が整ったかなと思い、自ら入社したい意思を代表に伝えましたね。(笑)
スタートアップなので初めは前職よりお給料は下がりましたが、頑張れば上げられると思っていたので不安はなかったです。

入社を自ら志願したとのことですが、決め手は何でしたか?

ハウスマートに入社を決めた理由は大きく3つあります。
1つ目は、世の中に存在する問題のなかでも、不動産業界の抱えるものは大きいという点です。これは個人的に刺さりました。
最初に開発のお手伝いのお声がけをいただいた際は、「不動産業界はなんだか怪しいイメージがあるから、論破してやろう!」と内心思いながらお話を聞きにいきました。しかし実際には、ユーザーを重要視したプロダクトの構想を針山が熱心に語っていて、良いサービスだなと感心し逆に論破されてしまいました。(笑)

2つ目は、当時の自分のスキルセットがそのまま生かせる見通しがあった点です。前職では、ビックデータの解析をしていたので、データを収集し解析していくことで、不動産業界の負を解消していくことが可能だと思えたのが大きかったです。

3つ目は、働く仲間です。当時2名の会社に前職の同期3名と一緒に入社したのですが、そのメンバーと代表含め信頼できる仲間だったので、良いサービスを実現できるのではと思い入社を決めました。

ハウスマートに入って、CTOになるまでの経歴を教えて下さい。

入社当初は、プロジェクトマネージャーというポジションを任されており、副業数名と正社員エンジニア3名で開発していました。2018年に開発組織拡大する際、今後エンジニアの採用を強化していくため、私がCTOに就任することになりました。

前職では、システム責任者という役割でしたが、当時は2~3名体制だったので、マネジメントというよりは小さいチームで進めている感じでした。そのため、ハウスマートに入社して初めて、本格的にマネジメントに関わることになりました。

CTOに選ばれた理由は何でしたか?

全体のアーキテクチャーの設計~開発までを初期から見ていたからではないでしょうか。

CTOになるまでどんなことを習得しましたか?

最初はプロダクトマネージャーだったこともあり「良いプロダクトを作れなければいけない」というのが1番にありました。
プロダクトを作るうえで、“ビジネス”、“テック”、“デザイン”の3軸が重要と言われていますが、前職では、広告の裏側の仕組みを作る仕事をしていたので、デザインに触れる機会がなく、デザインの知識はまったくなかったです。
ハウスマート入社当初のスキルを思い返すと、“ビジネス”が少しわかる、“テック”にはそこそこ強い、“デザイン”はゼロみたいな状態でのスタートでした。そのため、デザインの勉強と、同時にビジネスにあたる「どうやってお金を生み出すか」というところを勉強していきました。

デザインの古典と言われている書籍や当時流行っていたIDEOの「デザインシンキング」関連の本を読んだり、セミナーへ参加して勉強しました。最終的には実際にやってみることが大事だと思い、2016年の後半からデザイナーの方に正社員や副業で入ってもらい、一緒にプロダクトを作っていく過程でどのようにデザインを作り上げていくかを学ばせていただきました。

2018年12月 取締役CTOへ就任-

取締役CTOになるにあたって、何か勉強したことはありますか?

去年の年末に取締役に就任し、そのタイミングで改めて経営分野の会計やファイナンスに類するところを本格的に勉強しました。実地の勉強や決算が読める『決算が読めるようになるノート』や『Stockclip』を利用し、スタートアップ企業の公表している内容を読み、様々な会社のビジネス構造を理解することをしました。

それ以外は、Twitterで情報収集、会計の勉強の本を読む、経理や経営企画関連の人に聞くなどしていました。でも時間を決めて勉強するという感覚ではなく、もともと活字やドキュメント読むのが好きのなので、興味のある情報を読み進めて学んでいったという感じです。

カウルの開発について

現在会員数4万人突破したカウルですが、開発までの経緯を教えて下さい。

2015年、「ハウスマート」という会社名と同じプロダクトを出したのですが、CtoCマッチングアプリというコンセプトが斬新すぎて、短期間で急激に伸ばすのは難しそうだということから方向転換し「カウル」の開発が始まりました。「カウル」は、BtoCのマッチングサービスで、私が入社のタイミングにリリースしました。現在会員数4万人(2019年8月時点)を突破しています。

開発環境は、スタートアップ初期と3年たった現在とではどう違いますか?

当時は、頭で考えたものを、起こして機能にしていくという開発スタイルでした。そのため、複雑で作るのが大変な機能だったにもかかわらず、誰にも使われていないものがいくつもある、という状態でした。一方現在は、ユーザーインタビューを重ねてデザインを固め、実装していくというスタイルで行っています。

現在の進め方になったのは、“頭の中だけで考えてプロダクトを作っても使いやすいものは作れない”と知ったからです。
当初新聞などに取り上げられてユーザーを一気に集客しても、バケツに穴状態。ユーザーが離脱してしまうようなサイトでした。これではいけないと思い、リニューアルを決意しました。その頃から、ユーザーの声を聞くことを大切にしようと思い、ユーザーインタビューを始めました。今では、アプリの改善の際にどこのステップでユーザーが躓いているのか(検索ページなのか?内見ページなのか?)をデータで取り、その時の離脱状況によって聞く対象を変えてヒアリングするようにしています。現在まで、月1回のペースで、ユーザーへヒアリングし、改善するというサイクルを回し続けています。

開発チーム6名⇒12名拡大には苦労も……

チーム体制をどのように整えていきましたか?

2018年の頭はエンジニアが5名在籍していました。しかしこの頃初期メンバーのうち数名がエンジニアリングの技術の伸びを危惧して辞めていきました。やはり、ビジネスが拡大しないと、高負荷に耐えるなど新しいことに挑戦する機会がなくなってしまうと思います。その側面からもビジネスを伸ばし続けるというのは、大事だと実感しました。

そこから2018年9月の資金調達が決まったタイミングで「1年で20名体制の組織を作りたい!」という計画を立てました。そしてその目標に沿って、採用活動を行いました。
もちろん最初は、応募も来ないので応募を作るフェーズからスタートしました。まず採用するにあたって、働く人が働いていて楽しいと思える環境でないといけないと思い、ミッションの文言を整えたり、どういうプロダクトを作っていくのかなどの整理をしました。その後条件面も改善するためにリモートワークを週1で導入したり、お給料の水準を上げたりしていきました。

最初は、採用に関する知識がなかったため、採用支援をしてくれる会社とどういう媒体で募集していくのが良いか、スカウトは何本売ったらどれくらい面談に来てもらえるのかというのを設計し、実行していきました。プロダクトのマーケティングと同じで、まず色々な媒体を使って広く試していき、そこから、どの媒体がいいのか、どういう訴求でいくと反応が良いのかなど精査していきました。

また、応募してもらっても、なかなか採用に繋がらないときもありました。その時は、採用フローをスリム化したり、採用ステップの初期で会社の魅力を伝えるように工夫したりすることでやっと人が採れ始めました。結果、目標としていた20名体制には届きませんでしたが、多くの優秀なメンバーを迎え、現在12名までチームを大きくすることができました。

現在は、どのような開発体制で行っていますか?

我々はBtoCの「カウル」というサービスと、BtoBの「プロポクラウド」というプロダクトを作っています。なので、「カウルチーム」「プロポチーム」の2チームに分けてそれぞれスクラム開発をしています。
具体的には、スプリントの最初に1時間~1時間半で2週間でやる開発の内容を決めて、そのタスク1つ1つに優先度が高い順に5Pt、2Ptなどポイントを振っていき、2週間でチームが消化できるポイントを見積もりながら開発を進めています。スプリントごとに振り返りもしており、もし見積もりからずれたらその理由を深堀りし、見直しをしていきます。

スクラムは順調に回っているとのことですが、その秘訣は何だと思いますか?

役割をしっかり分けることが大事だと思っています。私たちは初期の頃から、チームにプロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーを必ず分けて置いています。
プロダクトマネージャーは、短期的にも長期的にも何をどの順番でやるか決めることに責任を持ってもらい、一方、プロジェクトマネージャーは、スクラムを回すということに責任を持っています。
よくマネージャが忙しくてスクラムがうまく回らないという話を聞きますが、その要因は責任と役割を全て1人に背負わせる体制で行なっていることが多いからだと思います。

ハウスマートのミッションと今後

最後に、ハウスマートのミッションと今後について語っていただきました。

“住を自由に”の実現に向けて

ハウスマートは、「住を自由に」をミッションに、「住まいを探す人とサービス提供者の両方が幸せなプラットフォームを創る」ことをビジョンとして掲げています。

現状、不動産売買の業界は、エンドユーザー側も不動産会社側もそれぞれに課題があると考えています。
エンドユーザー側は、そもそも物件購入を検討する際のデータが十分に揃っていません。また、家の購入は人生で何回でも経験することではないので、情報の見方がわからなかったりもします。この状況を変えるべくカウルでは、ユーザに判断基準となる情報を提供し、さらにそのデータを機械学習で分析して、相場情報やおすすめの物件の提案などを行っています。

不動産会社側は、IT化が遅れていることもあり労働集約型のビジネスにならざるを得ません。一人のお客様に真面目におすすめの物件を提案するのに週何時間も人手で作業する必要があります。
プロポクラウドでは、もっとも人手がかかる物件の提案作業を自動化するツールを提供しています。自動化できる部分はシステムで代替し、現地のご案内やライフプランを含めた相談など人間しかできない業務に集中してもらうことを目的としています。

売り切って終了のような業界へ変革を起こしたい

ゆくゆくは食べログのように営業マンのサービスにユーザーの評価を反映させる仕組みを作れるといいなと思っています。エンドユーザーから意見を返せるようにして、いい評価がついた営業マンにはお客様がつきやすくなるようなものを考えています。
結果として目の前のお客様をちゃんと幸せにしてあげることが営業マンの成績にもプラスになるというポジティブな循環を作って、売り切って終了のような業界に変革を起こしていきたいです。

高松氏のおススメのビジネス本
  • チームが機能するとは
    どういうことか?
    エイミー・C・エドモンドソン (著)
    Amy C. Edmondson (著)
    野津 智子 (翻訳)
  • ハイアットプットマネジメント
    アンドリュー・S・グローブ (著)
    ベン・ホロウィッツ (その他)
    小林 薫 (翻訳)
  • リーン・スタートアップ
    エリック・リース (著)
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