インターンからCTOへ!個人の成長が事業の成長へ直結する組織が実践する“エンゲージメント経営”とは?

創業から5年の昨年12月、東証マザーズに上場を果たした愛知県名古屋市に本社を構える株式会社スタメン。本日は、創業CTOで現在VPoEとしてエンジニアチームを統率する小林さんと創業インターンからCTOへ就任した松谷さんの2人に、エンジニアの育成や強い組織のつくり方について伺いしました。

オンライン取材に対応する㈱スタメン VPoE 小林氏(画面右)、CTO 松谷氏(画面左)
小林 一樹|株式会社スタメン 常務取締役VPoE

1976年生。愛知県出身。北陸先端科学技術大学院大学卒業後、複数のITベンチャーでプロダクト開発や開発部門のマネジメント、新規事業立ち上げなどを経験。2016年8月にスタメンの創業に参画。取締役CTOとして『TUNAG』の開発とエンジニア組織の立ち上げを行う。2020年3月に常務取締役VPoEに就任。プロダクト部長兼プロダクトマネージャーとして、エンジニア及びデザイナーの組織運営を統括し、組織づくりという側面からプロダクトチーム全体のパフォーマンス向上を担っている。

松谷 勇史朗|株式会社スタメン 執行役員CTO 

1994年生。愛知県出身。2016年に名古屋工業大学工学部法電気電子工学科を卒業。同年に名古屋工業大学大学院に進学し、半年で休学。プログラミング未経験ながらもスタメンでエンジニアとしてインターンを開始。そして2017年1月スタメンに入社。テックリード/マネージャーを経験し、2020年3月より執行役員CTOに就任。

株式会社スタメンについて

まずはじめに、御社の事業内容を教えて下さい!

弊社は、エンゲージメント経営プラットフォーム『TUNAG(ツナグ)』、オンラインファンサロンアプリ 『FANTS(ファンツ)』の2つのサービスを提供しています。SaaS事業として、企画~開発、営業、カスタマーサクセスまで全て自社でおこなっています。

創業当初から、会社と従業員、従業員同士の相互の信頼関係(エンゲージメント経営)を目的とした社内SNS『TUNAG』を提供し、2021年6月時点で、350社以上の企業に導入いただいてます。

2020年5月には、『TUNAG』の特徴であるクローズドなSNSの機能を生かして、ファンコミュニティ向けに改良した『FANTS』をリリースしました。コロナ禍でリアルなコミュニケーションの機会を持ちにくくなった今、ファンとの接点をオンラインで持とうと、アーティストやYouTuber、プロスポーツチーム、水族館などの主宰を中心に幅広く利用されています。

創業ベンチャースタメンにジョインするまで

㈱スタメン VPoE 小林氏
小林さんは、2016年8月にスタメンの創業期にCTOとして参画してますが、どのような経緯で入社に至ったのでしょうか?

小林さん(以下、小林):私は、ヤフー、グリーといった東京の企業でで開発や開発部門のマネジメントを経験した後、家庭の事情で愛知にUターンしました。愛知では、株式会社エイチームで働いた後に、フリーランスになりました。加藤(スタメン 代表取締役社長)とは、株式会社エイチームの時に知り合いました。

それから、加藤がスタメンの創業をする際にCTOを紹介してほしいと相談されました。当時、私はフリーランスとして働いていましたが、加藤から「どんな人をCTOにすべきか」と、相談を受けるようになりました。色々話を聞いていく中で、「加藤が求めている経験や価値観が私と重なり、私が最適なのでは?」となりまして(笑)CTOを依頼されたんです。もしかすると最初からそういう作戦だったのかもしれません(笑)

私はもともと、ベンチャーで大きな仕事を仲間と一緒にすることが好きな性格でした。しかし、家庭の事情でライフスタイル重視のフリーランスとして働いていたため、どこか悶々とした日々を過ごしていました。一方で、「これからベンチャーに入って、きちんと責任を持ってやり切れるだろうか」という迷いもありました。2週間悩んだ末、「人と組織」に重点を置く加藤の考えに共感することも多く、スタメンのCTOとして参画することにしました。

松谷さんは、名古屋工業大学大学院を休学中、インターン生としてスタメンへジョインされていますが、ジョイン~入社までの経緯を教えていただけますか?

松谷さん(以下、松谷):大学院1年生の夏休み、プログラミングを始めようとインターン先を探していたところ、創業直後のスタメンと出会いました。

創業まもない時期に、創業メンバーの間近で開発インターンとしてスタメンで働いた4ヶ月は、とても刺激的でした。創業メンバーからの刺激はもちろんのこと、自分次第で何にでも挑戦できる環境がそこにはありました。

IT業界の変化は激しく、特に創業まもない時期の経験はその時しかできません。もし大学院を卒業するまでの一年半という期間を待っていたら、スタメンはどこか遠くへ行ってしまうのではないかという焦りもありました。今、この環境を手放したらきっと後悔するだろうと思いから、スタメンに飛び込むことを決意しました。

プログラミング未経験からインターンとして働いていましたが、どのようにプログラミングを習得したのでしょうか?

松谷:CTO小林に直々にサポートしていただきました。スタメンでは、「ストレッチの効いたミッション(仕事)を段階的に与えて成長を促す」という育成方針をとっていますが、まさに創業期からそのようにサポートいただきました。

「いいモノをとにかく早く世に出さなければいけない」という状況の中で、多くのコードを書かせてもらい、その上でリリースの達成感を味わったり、不具合を出して失敗に向き合うことを繰り返す中で、エンジニアリングとはどういうものかを学ばせていただきました。

組織の成長に伴い、CTO/VPoE体制へ変更

㈱スタメン CTO 松谷氏
創業から約3年、CTOという役職を小林から松谷さんに譲渡されますが、その経緯を教えていただけますか?

小林さん:組織としては、20人が見えてきたタイミングだったかと思います。当時の私の業務は、大きく分けると、「プロダクトマネージャー」、「組織づくり」、「エンジニアリング」の3つでした。しかし事業の規模とエンジニア組織のメンバーが増えるにつれて、「組織づくり」と「プロダクトマネージャー」に時間を割くことが増え、「エンジニアリング(技術)」を見る余裕がなくなってきました。

各分野に分散して中途半端になる前に技術をしっかり人に任せたいと思っていた矢先、後にCTOとなる松谷の成長ぶりが光る出来事がありました。『TUNAG』 の分析基盤を規模拡大のために刷新するプロジェクトを松谷に任せたところ、初めての分野にも関わらず、AWSの専門家に聞いたり、色々な文献調べながら、高効率で高性能、拡張容易な分析基盤をつくり、経験豊富な猛者たちが競う AWS Startup Architecture of the Year 2019 でグランプリまで獲得してしまったのです。

この時、「このまま中途半端に私がCTOをやるより、自分より優秀で、本当にスタメンの技術力を伸ばせる人にCTOを担ってもらった方が良い。私は、組織と事業を大きくすることにコミットして役割分担をしたほうが、会社に対しても、チームに対しても、個人に対しても良いはずだ」と、確信しましたね。それからは、私がVPoEで組織と事業、松谷がCTOで技術という役割分担になりました。

もともと、私は暇さえあれば、1on1をしているタイプの人間で、意識が人材育成や組織の最適化に向いています。それよりは、暇さえあればコーディングしたり、技術を研鑽している松谷のような人がCTOであるべきだなと思いました。

スタメンのエンジニア組織体制とマネジメント

現在のエンジニア組織の体制を教えて下さい。

小林さん:現在は、上記の体制です。TUNAGを開発しているプロダクト本部とFANTS事業部に分かれていて、合計27名、エンジニアのみですと合計20名です。

FANTS事業については、松谷が技術面、私が組織面をサポートしながらも、各マネージャーが中心となって進めています。

VPoE⇔CTO2人の間で、コミュニケーションはどの位されていますでしょうか?

小林:定期的なものは、我々役員が参加する経営会議と、週に1回30分、1on1を実施してます。加えて、日常的にチャットや会話で、採用、技術、組織の話をしていますね。

2人の業務比率教えて下さい。

松谷:私は、開発に比重を置きつつも、事業、組織、採用にも関わっています。事業がどういう戦略で動くのか、それに適した組織と技術はなにか、など、全体的な視点から考えられるように常に横と連携しながら仕事をしています。

現在も、コードを書くことはありますが、全体の技術マネージメントがメインです。各チームの技術選定において、意思決定のフローに入って、ファシリテーションやフォローをしています。加えて、マネージャー達との1on1など、チームマネージメントも行っています。

小林:松谷には、インフラやバックエンドなど技術よりなチームを管轄してもらっており、技術的に難易度が高いプロジェクトを担当してもらっています。

小林: 組織が現在より小さかった以前は、私が全員と1on1や評価をおこなっていましたが、組織の強化を組織全体最適ができるように、最近は、チームメンバーの1on1や評価はマネージャーに任せています。したがって、今の私の大きなミッションは、「優秀なエンジニアの採用とマネジャーを育てること」です。

小林さんは、マネージャーを、どう抜擢してどう育てていますか?

小林:なかなか言語化は難しいですが、マネージャーは、「高い目標達成への意欲と人の成長や成果を本心から願える人」が向いていると思います。

実際に、私たちの会社でマネージャーをしているのは、仲間の成功とプロジェクトの成功を本心から願っていて率先してメンバーの支援や最適化に動き、目標達成に向けてチームの力を結束できる人ですね。

マネジメントへの興味や適正はやってみないとわからないことも多いので、まずは、後輩や若手を1人育成することからスタートしています。育成やフォロー(技術面だけではなく精神面も含む)状況を見て、段々と1人、2人と増やしています。

松谷さんは、メンバーのマネジメントをする上でどんな点を気を付けていますか?

松谷:技術もそうでしたが、マネジメントも小林から学んだことが多いです。特に、後輩育成については、「視点の高さ」が大きく影響するので、皆が視点を高く持てるようなコミュニケーションを意識しています。

例えば、チームメンバーに仕事の依頼をする際、「この開発お願いします!」と局所的な説明のみをするのではなく、「今、事業はこういう状況で、これを達成するとこれだけインパクトがあるから、この機能をあなたにお願いしたい」というように、上流から伝えるよう心掛けています。

また、楽しく働くということも大切だと思っています。緊張感のある環境や責任感を持ってミッションを達成することは大切なことですが、楽しくないとそもそも長続きしないし、成長もしないと思います。なので、楽しい職場づくりにすることは1つ大事なミッションだと思って取り組んでいます。

エンゲージメント経営を意識したスタメンのプロダクト開発

プロダクトの開発において、追加機能はどのようにして決めていますか?

小林:追加機能の開発の決め方は、大きく3つあります。

1つ目は、プロダクトマネージャーが事業戦略上、業界のポジショニングやプロダクトの要望として機能に落とし込む方法です。大きなプロジェクトは、大体こちらに当たります。

続いては、カスターマーサクセスが、ユーザーからいただくフィードバックです。「このような機能があったら良い」、「この辺で苦労しています」等のフィードバックから、細かな機能開発や修正をおこなっています。

最後は、社内からの改善要望です。BtoBのSaaS企業としては珍しいと思いますが、私たちの会社では、自社のプロダクト『TUNAG』を毎日のように活用しています。したがって、社内で「こうすればもっと便利だね、楽しいよね」という会話が日常的に生まれていて。それを機能へ落とし込むこともあります。

技術選定はどうされていますか?

松谷:技術選定を含む技術戦略は、事業戦略をベースに組み立てられるものだと考えています。そのため、技術がビジネスにどう貢献するのかというのをしっかり議論をした上で選定するようにしています。

また最近では、事業が2つになり、エンジニアの人数も増えてきたため、個別最適ではなく全体最適を意識した技術選定できるよう、全エンジニアが参加する「技術会議」を始めました。事業部や技術領域の垣根を超えて、それぞれの取り組みの背景や論点を共有することで、良いシナジーが生まれていると思います。

小林:プロダクト作りにおいても、「エンゲージメント経営」を意識して、積極的に取り組んでいます。『TUNAG』 の活用や様々な施策の結果、2020年度版 「働きがいのある会社」ランキングの小規模部門(従業員数25人~99人)にて第1位※に選出されました!

※調査機関:世界約60カ国で展開している世界最大級の意識調査機関Great Place to Work® Institute Japan

スタメンが目指す組織、それを実現するための人材

採用戦略について教えて下さい。

小林:スタメンの開発拠点がある愛知は、東京に比べてIT企業が少ないですが、様々な業界に豊富な開発経験を積んだ方もいますし、私のように東京で経験を積んでUターンしてくる方もいます。そういった方をしっかり採用して中核メンバーにしつつ、未経験ながらオンラインスクールや独学で学ばれている方を採用して育成することもしています。松谷が代表例ですが、ポテンシャルの高い人は、良い仲間と高い技術を求められる開発現場で急成長することができ、高い技術力を持ったエンジニアチームを作ることができるため、経験者採用とともに未経験の方の採用も積極的に行っています

とはいえ、組織が大きくなってくると、名古屋だけでは大きな組織はつくれなくなってきます。最近では、鎌倉の拠点で採用したり、フルリモートの方を採用したりと、徐々に全国で優秀なエンジニアが働ける組織に変わりつつあります。

コロナ禍で、リモートワークを進める企業は増えてますが、御社はどのような点に工夫していますか?

小林:当社は対面でのチームビルディングやコミュニケーションを重要視しているため、緊急事態宣言が発令されたリモートワークにし、宣言が解除されたらオフィス勤務に切り替えるという運営をしています。リモートワークでは、口頭のコミュニケーションをチャットやドキュメントで残すようにしたりと、細かいところで最適化しています。その他、Discordなどのツールの改善、おやつタイム、オンライン飲み会など色んな取り組みもしているところです。

エンジニアの評価はどうされていますか?

組織全体としては、カルチャーコード「心理的安全性の高さと目標達成を両立できるチーム」を意識しています。評価に関しては、年に3回の目標設定と人事考課を行っています。

現段階では、事業部のメンバーは25名程度と、マネージャーが各メンバーの貢献や良さを把握しやすい環境であるため、密なコミュニケーションを前提とした定性的な評価になっています。しかし、会社の成長に合わせて、OKRな組織運営を試すなど改善をしています。

スタメンの組織の自慢できる点をそれぞれ教えて下さい!

小林:2016年~2018年、スタメン創業から組織が大きくなっていく過程で、スタメンではエンジニアの離職者が増えました。それから、2019年に組織の立て直しをおこなって以降は、エンジニアの離職者が0人になりました。つまり、この2年半、全員のエンジニアが継続して成長し、市場価値を上げながらスタメンに在籍してくれているのです。転職者が多いエンジニア業界において、これだけ定着率の高い会社は珍しいと思います。良い会社、チームを、この名古屋で実現できているのは嬉しいですし、ちょっぴり自慢です(笑)

松谷:技術的な点についてお話すると、『TUNAG』と『FANTS』は、サービス利用者数が増えてきました。それに従い、事業におけるプロダクトの改善インパクトが年々大きくなってきていますし、スケーラビリティやUXを意識した開発や技術選定の重要度が高まってきています。そういった中で、現在、私たちのプロダクトは、既存の技術スタックに縛られずにより良い技術へ投資するタイミングに来ています。

例えば、UX向上を中心とした開発効率向上のために Next.js を採用したり、システムのスケーラビリティを一層高めるためにサーバーをコンテナ化したりなど、新しい技術選定に改めて目を向ける機会が増えています。『FANTS』は新規事業としてこれからカタチにしていくフェーズですし、『TUNAG』も理想の姿に対してまだまだ足りないことだらけ――。やるべきことが沢山あり、技術的にも歯ごたえのある、とても面白いフェーズだと思います。

最後に、スタメンで成し遂げたいことをそれぞれ教えて下さい。

小林:弊社は、「一人でも多くの人に、感動を届け、幸せを広める。」を経営理念に掲げています。当たり前のことですが、良いプロダクトを作り続けることで、お客様はもちろん、社員を含めて感動と幸せを広められると思っていますし、スタメンの可能性はまだまだ無限大に広がっています。

エンジニアという職業の方は、何社か経験する人が多いですが、それぞれ人生のターニングポイントはあると思ってます。今スタメンで仕事をしているエンジニアが、「あの時、スタメンにいたことが大きかった」と思ってもらえる会社やプロダクトになれるよう頑張りたいです。

松谷:まずは、『TUNAG』と『FANTS』を圧倒的に伸ばしていきたいです。私自身、事業が成長していく中でエンジニアとして成長し、それがまた事業の価値に繋がるというサイクルを経験をしているからこそ、伸びている事業の中で働くことが成長に繋がることだと胸を張って言えます。今後、この好循環をチーム全員で経験し、個人の成長と事業の成長がWinWinな関係を築けるよう、中長期的視点を持ってプロダクト開発に邁進していきたいです。

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