【鎌倉新書 執行役員 プロダクト開発部部長 溝口氏】約1年で個→組織の働き方へシフトさせたマネジメント術と今後の組織課題とは?

鎌倉新書 執行役員 プロダクト開発部部長 溝口氏 プロフィール


溝口 健治氏(みぞぐち・けんじ)|鎌倉新書 執行役員 プロダクト開発部部長
SIerの会社で受託システムの開発・運用を4年半経験したのち、2007年、コンサルティング会社へ入社。業務改善などコンサルティングの業務に携わり、コンサルタントとしての最低限のソフトスキルを習得。その後2010年、楽天株式会社へプロデューサーとして入社。開発チームのマネージャーとして活躍する中、2014年Rakuten Asia Pte. Ltd.でシンガポールへ赴任。開発組織体制作りを1から構築を経験。その後、2018年5月 株式会社鎌倉新書へ入社。現在は、執行役員兼プロダクト開発部部長として、開発部署のマネジメントをする傍ら、事業部と開発部で協業しながら、どのように会社を成長させるかという視点で、必要なアクションを周囲を巻き込みながら推進している。

鎌倉新書について


Q.まず初めに、鎌倉新書の事業内容について教えて下さい。

鎌倉新書は、いわゆる最近よく聞く“終活(ライフエンディング)”にまつわる事業を展開している会社で、今年で36年目の会社になります。主力事業は、お墓、葬儀、仏壇の3つですが、今期からは、新たに相続事業もスタートし、現在6つの事業を展開しています。それ以外にも、新規事業に力を入れています。

Q.鎌倉新書が終活サービスを提供する意味は何ですか?

“終活”には、色々な課題があります。1つ目は、エンドユーザー側に、何かお困り事があっても、サービスがどのように違うか分からないという状況があります。2つ目は、それを解決できる事業主がいても、どこに相談したらいいか分からないという状況も生まれています。

それらの課題に対して、我々は何かモノを売るわけではなく、お困りごとを持ったエンドユーザーを必要な事業者様へお連れするような立ち位置でビジネスを展開しています。社内では、それを例えて「船頭」という言い回しを使用しています。川を渡りたい人がいる、その人を正しい場所へ導いていくような船頭になろうというところを目指しています。

鎌倉新書へ入社するまでのキャリア


Q.溝口さんの鎌倉新書に入社するまでのご経歴を教えて下さい。

鎌倉新書で4社目になるのですが、1社目は、アイ・ティ・フロンティア(現:タタコンサルタンシーサービシーズ)というSIerにエンジニアとして新卒で入社しました。委託している会社に開発業務を行ってもらうようなスキームだったので、どちらかというとブリッジエンジニアというような働き方で、コードを書くような仕事はあまりしていなかったです。

数年後、クライアント先に常駐することになり、事業会社の事業側の方々と仕事をしていく中で、自社で事業を持たない受託側で仕事をするよりも、事業を持っている事業者側で働く方が、ビジネスの成長により貢献できるし、楽しそうとと思ったため、別のキャリアを考えました。

Q.その後、事業会社側ではなくコンサル会社へ行った理由は何ですか?

ビジネスパーソンとしてのスキル(論理的思考/ビジネス的な能力)が絶対的に足りないというのは思っていたので、そこを伸ばすためにどうしたら良いかというのを考えました。その結果、コンサルティング会社に行こうと考え、プライスウォーターハウスクーパースへ転職をしました。

そこでは、ITに関するプロジェクトもやりながら、ITとは離れた業務改善やPMOなどのプロジェクトもやりました。そのような経験を通じて、ロジカルシンキングやビジネスを動かす考え方などを一通り学べたように思えます。

Q.そこから希望する事業会社楽天へ入社されていますが、楽天ではどのような仕事をしましたか?

楽天では、プロデューサーというポジションで、最初スタートし、そこから徐々にエンジニア、プロデューサー含めたチームを見るマネジメントという立場になりました。

そこから赴任でシンガポールへ約2年間行く機会があり、現地採用の難しさ、日本人以外のマネジメントをする難しさや、人種限らずどういうコミュニケーションをとり、その人のモチベーションを高めて、組織として必要な方向へどう個人のアウトプットを向けるかなどはここで鍛えられました。

また、周りの環境が充実していない環境下で、必要なことを進めるためには何でもしないといけないというようなベンチャーマインドもここで醸成されたように思います。

それから日本に戻り、別のサービスを開発チームのマネジメントをしていたのですが、その当時、だんだん自分の中で、仕事をこなすことが多いと感じるようになりました。同時にそれは、自分の成長が止まっているのではないかと考え始めました。

Q.鎌倉新書へ入社する経緯を教えて下さい。

今の充実した環境を捨てて、思い切って新しいチャレンジをしなければと思っていた時に、ちょうど、鎌倉新書の上長からスカウトメールをいただき会うことになりました。

また、当時社長を務めていた方がたまたま楽天の元役員だったということもあり、鎌倉新書に興味を持ちました。そして会社のことを色々調べていくうちに、鎌倉新書という会社のポテンシャル、事業内容の魅力、優秀な人材を集めているというところから、この会社が本気で事業を大きくしてこうという意思を感じました。

そのようなポテンシャルの会社は、自分がチャレンジする場としては申し分がないのではと感じるようになり、会社の方々とお会いし、よりその具体的なイメージが持てたので、2018年の5月にジョインしました。

鎌倉新書へ入社してから、メンバーと信頼関係を築くまで

Q.鎌倉新書には、今の立場(開発トップ)で入社したのですか?

いきなり、部長、副部長のような立場で入ったわけではなく、初めはPMのような立場で入りました。

CTOのようなポジションへのパスとしては、元々所属している会社でCTOなどの開発トップになっていくパスと、別の会社に入ってCTOなるパターンと2通りあります。どちらのパスでも言えることは、結果「この人は信頼できるし任せられる」という形で周囲から認められるかどうかが一番大事だと思うんです。

ですので、転職でぽんと入ったりすると、信頼が当然ゼロの状態なので、まずはそこから積み上げなければいけないというのがあります。毎回転職の際はどうやって自分自身への信頼を獲得するかを一番に考えています。「あの人が言うんだったら、やってみようかな。」と思ってもらえる形になるのが理想です。いきなり入ってきた人がいろんなことを突然言って、今までのやり方を大きく変えようとしている風になると、絶対に上手くいかないと思っていたので、その点は気を付けました。

Q.メンバーと信頼関係を築くためにどのようなことを行いましたか?

まず、入社して最初は、メンバー1人1人に時間を取ってもらい、自分が何者なのかということ、みなさんのやっていることや今の課題を聞いて、一緒にやれそうなことなどをいろいろ話しました。

今までのマネジメント経験の中で分かったことは、“こういうマネジメント方法でやればどこでもうまくいくというやり方は存在しない”ということです。相手にとって何がやる気スイッチになるのかというのは一人一人異なるので、一人一人と丁寧に会話を行い、性格や考え方などを知りたかったというのが、面談をしたというのもそれが理由ですね。

そして、話を聞く中で、誰がこの組織のキーパーソンなのかというのを見つけて、その方のサポートにまず注力することを優先しました。キーパーソンに信頼してもらえば、よりチームからの信頼に繋がりやすいということもあるからです。

また、偶然にも何件かプロジェクトにトラブルが発生したものがあり、プロジェクトマネジメントの経験を生かしてサポートをして、上手く着地させることで、メンバーからの信頼関係が少しずつ築けたように思えます。

個→組織の働き方へシフト


Q.鎌倉新書に入り、開発組織にはどんな課題がありましたか。

僕が入社して課題に思ったのは、当時のエンジニア組織の働き方が個人ベースだったことです。

おそらく、生産性だけを考えたら、個人でやっていたほうが最大化できる可能性もあるのですが、一方でだんだん人も増えてきて、コミュニケーション等の問題で上手くいかない場面も出てきましたので、個の働き方から、組織の働き方へシフトするタイミングだなと判断しました。

Q.どのようにして、個→組織へ変えていきましたか?

仕組み化することですね。仕組み化することで、品質を担保できるメリットを説明しながら導入を進めました。主に以下2点実施しましたが、結果、自然発生的な横の連携が増えてきました。

1、2週間スプリント開発の仕組みを導入

当時は、都度リリースが行われていて、いつどこでどんなリリースがあるかがコントロールできない状況でした。そのため、おそらく小さなトラブルなども多く発生したように思います。

このような状況を踏まえて、まず「何故、この状況がまずいのか。」を各部署の事業部長やディレクターなどを集めて説明しました。上場企業として品質を維持することの重要性と、それをするためには一定の仕組みの導入が不可欠であることを丁寧に説明しました。

その後、「2週間スプリントの導入」を提案、リリース日を固定し、リリース前にやるべきテストをしっかり行い、一定の品質を担保したプログラムをリリースしていくようにしました。最初は、リリース前にやるテストケースもなかったような状態だったのですが、今ではリグレッションテストケースを作り、ディレクターがリリース前に事前に一通りのテストを通るのが当たり前のプロセスになりました。

そうすることで、品質も安定させられるので、バグも起きにくくなります。
結局、バグが起きると、その調査や修正に相当な工数が取られてしまい、本来進めたい案件も進められなくなります。その結果、アウトプットが減ってしまうことにつながります。

鎌倉新書は、きちんと丁寧に説明して提案すれば、それが実現できる環境が社風としてあります。私が行ったことも、鎌倉新書のカルチャーがあったからこそ、スムーズに実現できた部分も多かったと思います。

2、事業部を横断したコミュニケーションの活性化

開発部の組織の話ではないのですが、鎌倉新書では事業部側にWebディレクターが所属する体制を取っているのですが、Webディレクターが各事業側ごとに分かれている体制だったので、横の連携(知識・経験の共有)ってほとんどないという状況でした。

例えば、ある事業で失敗したことに対して、他の事業はその状況を知らないので、同じ失敗をしてしまえば、会社として大きな無駄が発生してしまいます。そのため、開発チームの中に、全事業部のWebディレクターが兼務所属するグループを作って、ディレクター間で知識・経験・課題を共有するMTGを週1回設けました。

その結果、横のコミュニケーションは活性化し、成功事例や失敗事例、現状の課題などを積極的に共有する文化が生まれ、特に良い事例の横展開はスピードアップしました。

執行役員としての役割


Q.2019年2月に執行役員就任。
執行役員(経営)の立場ではどのようなことをしていますか?

経営会議や取締役会にボードメンバーとして参加しています。取締役会では、社外取締役からの質問・課題を受け、それをレポートしたり、対応するなどを行っています。

Q.経営的な立場は初めてだと思いますが、難しさはありましたか?

はい、ありました。
これまでのキャリアの中で、経営会議や取締役会議に参加することはなかったので、実際どういう風に行われているのかなど分からなかったのですけど、実際入ってみて、取締役の方々の視座や、どういった視点で経営の良し悪しを判断しているのかということは、とても勉強になるなと思っています。

会社を運営する最終意思決定者(取締役)の人達が、どんな課題意識を持っていて、それが自分たちの部署で考えると、こういった課題に落ちるといった視点はとても新鮮です。

自分が逆の立場になったときに、このような課題感が見えるのか、自分が管轄していない部署でもきちんと課題を見れるのかなど視点や知識は、まだまだ足りていないと思っていて、今その視点を持てるよう努力しています。

Q.開発部⇔経営層とのブリッジはどのようにしていますか?

常に会社における課題は把握しておいて、それを解決できるような提案をプロアクティブにやることを常に意識しています。組織変更などについても、誰かから指示を受けたとかではなく、自ら「こういう課題に対して、こういった解決策を取りたいと思っています。」と説明をして、承認を取りながら進めました。

開発部だけに限った話ではありませんが、なぜこのような体制が必要なのかといった点を都度きちんと関係者に説明しておかないと、ただのコストセンターにしか思われないと思います。事業が堅調な時は良いのですが、そうでない時はコスト削減対象になってしまうので、丁寧な説明を行なっていく義務があると考えています。

その点、私の場合は幸いにも理解ある上長の取締役がいるので、かなり助かっている部分はあります。ただ、会社によっては、そういった心強い存在がいないケースもあると思うので、自分たちの会社・組織を守るためにも是非心がけていただきたいです。そうしないと、急に「来期は、予算を半分にして。」という話になるような会社も場合によってはあるかもしれません。

最後に


Q.今後の目標を教えて下さい。

開発部に関しては、人数は大きくは増やさずに、生産性を上げていくというところに注力したいと考えています。もちろん、必要な投資はきちんと行いますが、私たちのような大企業でない組織は、常に生産性は意識するべきだと思っています。

また、全社視点で進めたいと思っているのは、社内のデータを上手く活用して企画力を強化するという点です。どの企業でも課題としてあると思うのですが、社内にあるデータを活用して会社を成長させる仕組みづくりというのは、本当に難しい課題だと思っています。

一方、我々の会社は、CSというコールセンターの部署があります。そのタッチポイントで得られた情報をどう次の施策に生かすかというのが、我々の重要なチャレンジだと思っています。事業成長に貢献できるデータドリブンな組織を作っていきたいと強く考えています。

いずれにせよ、鎌倉新書はやりたいことを提案して合意が取れればどんどんチャレンジさせてくれる会社なので、自分も社内で一番チャレンジをしているなと思われるように、今後もどんどんチャレンジしていきたいと思っています。その経験が自分の成長に糧になるというのは、分かっているので、ポジティブにチャレンジを続けたいです。

■溝口氏のおススメのビジネス本
・デジタルの未来 事業の存続をかけた変革戦略/ユルゲン・メフェルト 著/野中賢治 著
・Lean Startup/エリック・リース (著)
・ロジカルシンキング/照屋 華子 (著), 岡田 恵子 (著)

この記事を書いた人
OCTOPASS編集部
OCTOPASS編集部
CTO育成及び就職支援サービス「OCTOPASS」の編集部。主にCTO層のインタビュー取材を担当。