急拡大中の企業のVPoEに聞いた、ビジネスの発展に繋がる開発組織を作るコツ

業界業務の経験豊富なその道のプロに、ピンポイントに相談できる日本最大級のナレッジプラットフォームを提供する株式会社ビザスク。本日は、急成長中の同社にて、エンジニアの組織構築に邁進するVPoE 鶴飼 吉行氏に組織の今とこれからについて伺いました。

鶴飼 吉行 | 株式会社ビザスク VPoE

専門学校卒業後、エンジニア、プロジェクトマネージャとして独立系SIerを複数社経験。その後、ウィルゲートにて、開発執行役員に就任。組織マネジメントを中心にプロダクト開発に従事。2020年1月にビザスク参画、同5月にVPoEに就任。

株式会社ビザスクについて

ビザスクは、日本最大級のナレッジプラットフォームを運営
はじめに御社の事業内容を教えて下さい。

ビザスクは、「知見と、挑戦をつなぐ」をミッションに、世界中のイノベーションを支える日本最大級のナレッジプラットフォームを運営しています。

アドバイザー登録者数国内外14万人※1超えを誇る知見データベースを活用し、新規事業開発における業界研究やニーズ調査、人材育成、グローバル進出等、様々な課題解決のためのマッチングを行っています。

これらの知見データベースを生かして、主力事業であるスポットコンサルサービス「ビザスクinterview」をはじめ、BtoB Webアンケート調査「ビザスクexpert survey」、新規事業創出支援「ビザスクproject」、社外役員マッチング「ビザスクboard」等の法人向けフルサポートサービスや、セルフマッチング形式のスポットコンサルサービス「ビザスクlite」を展開。現在の取扱い高は昨対比163.9%※2と、今なお急成長しています。

※1:2021年4月14日時点 ※2:2021年2月期

前職から、開発組織作りに奮闘。ミッションやマネージャー育成などに注力

続いて、鶴飼さんについて伺います。はじめに、鶴飼さんがエンジニアとしてキャリアをスタートするまでの経緯を教えて下さい。

もともと、何か手に職をつけたいと思っていたんです。その中で、ゲームも好きだったため、ゲームプログラマーを目指そうと専門学校へ通うことにしました。それから、インターン先の企業でWEBアプリケーションの開発に携わる中でWEBへの興味も次第に高まりましたので、卒業後はSIerの企業へ就職しました。

社会人になってからは、どのようにキャリアを積んでこられましたか?

SIerを複数社経験した後、2015年にウィルゲートへWEBエンジニアのポジションで入社しました。入社当初のウィルゲートのエンジニア組織は、全体的に若く、大規模なプロジェクトを回せるほどの知見を持ち合わせていないという状況でした。そのため、SIer時代にプロジェクトマネジメントの経験があった点を評価いただき、ゼネラルマネージャーになり業務がマネジメントメインになっていきました。

ゼネラルマネージャーの後に、2018年4月、開発執行役員へ就任されていますが、役割はどのように変わりましたか?

ゼネラルマネージャーの頃から、役員会に出席するなど、実質、開発執行役員のような役割を担っていましたので、開発執行役員就任後も、役割はほとんど変わらなかったです。

ただ、役職が上がるにつれ、組織課題がより明確に見えるようになってきました。

例えば、前述した「大規模なプロジェクトを回せない状況」は、開発組織の体制に起因していました。当時、ウィルゲートは、メディア・コンテンツマーケ・SEO事業など複数の事業を展開しており、開発メンバー20名程は各々の事業へコミットするといった組織体制でした。そのため何か大規模な開発を実施しようとすると、どこかに支障が出てしまうという状況に陥っていたのです。

この状況に気づいてからは、開発組織の強化に邁進しましたね。エンジニア組織全体としてのミッションを定義するところから始まり、マネージャー育成など、徐々に整備していきました。

これらの経験を通じて、強い開発組織を作るためには、経営的な観点も含めて意思決定していくことが大切だということ、それらの視点を養うことができました。

「マネージャクラスの育成」は、多くの企業が苦労されていますが、どのような人を抜擢していますか?

リーダークラスまでは、短期の施策に対してコミットメントできる人が上手く回せますので、技術力がある方を選んだ方がよいケースが多いです。一方でマネジメントクラスは、全体を管理する立場になるので、技術力以外の別の観点が必要になってくると思っています。その方が持つ、ポテンシャルや人物像などといった人生経験の中で養ってきたことの方が、マネジメントに向いているか否かがはっきりしています。そのため、それらの観点から、マネジメントに向いていそうな方に声をかけ、教育していきました。

ビザスク入社のきっかけは、サービスへの共感。ミッションは、事業の急成長に伴い急拡大する組織をマネジメントすること

2020年1月、ビザスクへ転職した背景を教えて下さい。

ウィルゲートで執行役員をしていた時に、花村(ビザスクの当時のCTO)と知り合いました。それから何度かエンジニアの組織課題や評価、育成方法についてディスカッションを重ねていくうちに、共感することが多かったのを記憶しています。それから、ウィルゲートを退職することを花村に報告した時、ビザスクへお誘いいただきました。

花村への共感はもちろん、ビザスクのサービス自体も深く共感していました。その後、端羽(ビザスクのCEO)とお会いし、「どういう方向性で組織を伸ばしたいのか」、「何を期待して入社してもらいたいのか」など具体的な方向性を聞いたうえで入社を決めました。

入社当時、鶴飼さんが求められていたことは何でしたか?

ビザスクは組織全体の約3割がエンジニアです。組織拡大や事業成長に伴い、エンジニア組織にも新しいメンバーが増え続けている急拡大真っ只中の1年半前、当時CTOの花村と私の二人三脚がスタートしました。

当初私は、プラットフォーム開発グループで基盤整理のチームを担当しながら、頭の中では常に「組織的な課題は何なのか、どこに不満があるのだろうか?」という組織的な視点からのアプローチを考えていました。一方、花村は「技術戦略的な視点から、何を目指すか」という視点からエンジニア組織にアプローチしていましたね。入社から数ヶ月たって、2020年5月にVPoEに就任し、エンジニア組織全体を幅広くみるようになりました。

ビザスクが実践する1on1のコツと成果

御社では1on1を導入していますが、どのように運用されていますか?

ペースは、週に1回。現在(2021年4月)は、まず、グループ長やリーダーが、各々メンバーと1on1を実施し、課題を共有します。そのうえで、私がグループ長2名とリーダー5名の計7名と1on1を実施するという体制で、組織全体の課題を抽出して把握するよう努めています。

1on1を上手く運用するコツや心がけていることがあれば教えて下さい!

もちろん、私からの期待や伝えたいことは山ほどあります。しかし、1on1では、「ヒアリングすること」に一番重きを置いています。話を聞くことで、組織への不満やシステムの問題などが少しずつ出てくるからです。また、ヒアリングすることを重視するならば、事前にアジェンダを用意してもらうのも良いでしょう。ビジネス全体を見ている立場ですと、内容によっては即答できない可能性もあるので、事前に準備して臨むこともあります。その方が、お互いにとって有意義な時間になると思います。

加えて、1on1の時は、上司や部下という関係ではなく、個人対個人として話をし、信頼関係を築くことが重要だと思います。特に今はリモートで実施しているため、なるべく顔を映すこと、通常話すトーンよりキーを1つ上げて聞き取りやすいように伝えることを意識していますね。

鶴飼さんは、1on1の成功とは何だと思いますか?

メンバーと1on1をしていると、「自分がどこまでやって良いか分からないから、動きにくい」という意見が往々にして上がってきます。そのような時、範囲を明確にしたり、動きやすいように後ろから押してあげるような助言などを行い、結果として、メンバーが動きやすくなるのであれば、1つ成功と言えるのではないでしょうか。

エンジニアの評価は結果だけでなくプロセスも考慮。制度を支えるのはビザスクの共有文化

ビザスクが大切にしている6つのVALUE
現在の鶴飼さんの業務内容を教えて下さい。

フェーズによって変わりますが、今だとチームビルティングが5割、採用3~4割、セキュリティ管理に1~2割位の割合です。私は、1 つのチームにコミットする形ではなく、チームを横断してそれぞれの課題を解決するために動くことが結構多いですね。

CTOの花村さんは2020年11月にご退職されておりますが、花村さんが担っていた技術選定は、現在誰が担っているのでしょうか?

もともと花村のトップダウンで技術選定していたわけではなく、開発リーダー会議でディスカッションを通して決めていたので大きくは変わらないですね。上が抜けたら技術選定できないという状態の組織ではなく、それぞれがカバーしあって、ビジネスサイドと向き合えているチームだと思います。

そうなるまでに、花村がチームをしっかり作ってくれたので、本当に感謝しています。

続いて、エンジニアの評価について教えて下さい。

エンジニアもできるだけ目標を数値化すべきだと思っており、チームの目標を細分化して個人の目標に落とし込んでいます。簡単に言ってしまうと、KPIツリーを作りましょうという話です。例えば、ビジネスの目標に「××の工数を10%削減しましょう」という目標があるとします。それに対して、開発チームは「何をすれば10%削減できるのか」、「10%削減するためにどんな機能開発をするべきか」を考え、目標に反映するようにしています。

例えば、まだはっきりと開発すべきものが決まっていない場合は、ビジネスサイドへのヒアリングから始めることもあります。そして、QCDの優先順位を決めて、1人で達成できるかどうかは1つの目標数値になるかと思います。その上で、その目標をどれくらい達成できたかどうか(達成率)で評価をしています。

このように評価すると、自分の作業の全体への貢献度が分かりやすいため、一人一人がタスクに向き合うモチベーションも上がりやすくなります。また、「これは、何のためにやっているのだろう?」ということが、起こりにくくなり、全体最適化しやすいです。

加えて、数字の達成率だけでなく、そこに至ったプロセスも評価すべきであるというもう1つの評価軸があります。物事には、必ずプロセスがあるので、どのようにPDCAサイクルを回してきたか、それは再現性を持ってできるものかという点も考慮して評価しています。

プロセスはどのように把握しているのでしょうか?

自己評価に加えて、全社的に半期に一度実施している「ピアコメント」が役に立っています。一緒に業務に取り組んだ人からのコメントにより、例えば、キャッチアップできていなかった業務をキャッチアップできたり、自己評価が控えめな性格の方の評価を事実となるべく齟齬ないよう反映させたりすることができています。

また、昨年からは、メンバーがもらった「ピアコメント」をエンジニア組織内で公開するようになりました。「チームが違うと何をやっているか分からない」という垣根をなくすことができればと思い、この取り組みを始めました。

このように、「ピアコメント」自体も、改善を繰り返しながら良いものにしていけたらと思っていますね。

※ピアコメント……上司だけではなく、仕事で関わりのあるメンバーから記名式でフィードバックをもらう取り組み

オープンな社風なんですね!

はい。「知見と、挑戦をつなぐ」をミッションに掲げているように、組織としても共有文化は根付いています。やはり、閉じたところで解決しても、その場の閉塞的解決でしかありません。けれども、ナレッジを蓄積すれば、他のチームで同様のことが起こっても解決できます。

ビザスクの組織体制

そのため、エンジニアとビジネスサイドと距離が近いところも“弊社らしさ”だと思います。例えば、セルフマッチングのスポットコンサルサービス「ビザスクlite」は、ビジネス側とエンジニアメンバーが同事業部に在籍しています。また、ビザスク社内用管理ツールを取りまとめている大きなグループ(ビザスク開発G)では、臨機応変にチームを組みながら業務を進めています。

エンジニアの力が、ビジネスの発展に繋がる組織へ

どのようなエンジニアが御社に合うと思いますか?

まず、ビジネスへの共感とバリューを理解できることは重要です。

そのうえで、弊社はビジネスサイドと近い距離で作業することが多いため、コミュニケーション能力も重要視しています。

我々エンジニアは、技術用語を多用しがちですが、技術用語を知らないビジネス側相手に伝わるように表現できるかは、重要です。また、ビジネスサイドの要望を上手く整理して、必要なことを聞き出すといったコミュニケーションも求められます。

技術面のスキルももちろん大切ですが、綺麗なコードをかけたところで、どの程度ビジネスに生きるかは分からないので、弊社は、敢えて選考にスキルチェックのようなものは置いていません。要件をまとめ上げて、さらに綺麗なコードがかければ、それがベストですけどね(笑)

その他、直近抱えているエンジニア組織の課題があれば教えて下さい。

やはりリモートワークが中心になってからは、オンボーディングや品質など様々な課題があります。これらの課題を解決できれば、地方にお住まいの方も積極的に採用活動もできますし、エンジニアの活躍できる場所も広がると思っていますので、是非積極的に取り組んでいきたいですね。

最後に、VPoEとして鶴飼さんがビザスクで成し遂げたいことを教えて下さい!

僕自身、エンジニアとして、システムを作る以外の色々な不都合や不整合にやきもきしながら仕事を進めていた経験があります。しかし、単にエンジニアだけに良い環境を作ったとしても、ビジネスが発展するわけではありません。ビジネスに寄り添いながら、当然、僕たちエンジニア組織があるべきです。

したがって、エンジニア達が楽しく仕事をしつつも、きちんとコードの質に向き合い、ビジネスに向き合い、どんどん組織拡大できる。そんな組織を作ることが目標です。エンジニアは、自走できるとますます開発が楽しくなるため、まずは自走できるための下地を整えていきたいです。

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