27年間リアル店舗を強みに拡大してきたヘルスケア企業がIT改革に挑むワケ

世界140店舗以上、業界トップシェアのストレッチ専門店『Dr.stretch』を運営する株式会社フュービック。その大規模システムを支えているのが、2019年2月に同社エンジニアチームを子会社化して誕生した株式会社Fubic SIです。今回は、昨年11月に同社初のCTOに就任した黒木氏とエンジニア組織のマネージャー小峯氏に話を伺いました。

株式会社フュービック 取締役CTO 黒木 信吾氏 プロフィール

黒木 信吾(くろき・しんご)| 株式会社フュービック 取締役CTO

1984年生まれ宮崎県出身。明治大学理工学部(物理学科)を卒業。ベンチャー企業でエンジニアとして従事し、モバイル端末にて国内初の行動ターゲティング広告配信システムを開発。その後大手小売企業などを経て、2014年株式会社KOMPEITO取締役CTOに就任。2019年よりフュービックにジョインし取締役CTO就任。“ITをリアルな体験に還元すること”を信念に、スタートアップでの経験とテクノロジーを用いて新たな視点から顧客体験の充実を目指す。宮崎県公認のみやざきブランドアンバサダーとしても活動。

株式会社Fubic SI サービスデベロップメントチームマネ―ジャー 小峯 将威氏プロフィール

小峯 将威(こみね・まさたけ)| 株式会社Fubic SI サービスデベロップメントチームマネ―ジャー

ベンチャー系SIerを経て、株式会社ぐるなびに転職。フレームワーク開発、レコメンドシステム・KVS・全文検索エンジンの導入を行う。その後、複数事業会社で、レシピサイト、ソーシャルメディア、口コミサイト、オウンドメディア、求人メディア、ECなどのサービス・アプリ開発に携わる。2019年にFubic SIにジョインし、サービス開発組織作りを担当。

フュービックについて

まず最初にフュービック(親会社)とFubic SIの関係を教えてください。

黒木さん:フュービックは、「健康を通し多くの人の未来を大きくする」をミッションに事業を展開しています。世界140店舗以上、業界トップシェアを誇るストレッチ専門店『Dr.stretch』の運営や月間1000万PVを誇る『テニス365』のメディア運営に加え、施工やリゾートホテル『THE SCENE』の運営、無農薬栽培など幅広く運営しています。

そして、それらの事業をITで支援する会社として、2019年2月に分社化し誕生したのが、Fubic SIです。最初は、「店舗の決済システムを内製化しよう」という動機で、札幌のPOSレジ会社の買収に至りました。それからフュービックに在籍していたエンジニアがFubic SIの配属になり、システム開発会社として確立。現在は北海道、東京、ベトナムの3拠点で活動しております。

何故、内製化をしたのですか?

黒木さん:内製化の一番大きなメリットは、“お客様の声がダイレクトに届く”ことです。間に第三者が入ることでお客様の声がすぐに届かない状況になるのは、非常にまずいと思っています。そのため、弊社はなるべく内製化をしていこうという方針で動いており、店舗の施工、社員研修、コールセンターなども内製化しています。

フュービックと出会うまで

お二人のこれまでのご経歴について教えて下さい。

黒木さん:私はもともとエンジニア志望だったわけではなく、就職活動のタイミングで何になろうか考え始めエンジニアになることを選択しました。きっかけは当時、テレビCMを打つなど大規模な宣伝を行っているわけでもないのに、口コミで広がり大流行していたミクシィさんの存在です。この動向をみてモバイルの世界は良いものを作れば評価される純粋な業界だなと魅力に感じ、モバイルエンジニアになることを決意し自分も大好きなゲームを開発する会社へ就職しました。

当時、モバイルゲームバブルが起こっていたため、会社の業績は好調でした。けれども、ユーザーである子供たちが我々の開発したゲームに1日2~3時間費やしていたり、毎月課金しているという状況を見て、ある時ゲームを作っていること自体が社会貢献だと思えなくなってしまいました。

それからは、現実社会で還元できることをやろうと心に決め、全国規模で展開している総合ディスカウントストアのシステム開発・運営や広告代理店業やマッチング系サービスを提供する会社に勤務しました。

それから「30歳までに地元へ貢献したい!」と日頃から思っていたなかで、29歳の時、農業分野で起業したという方とバーで出会いました。彼らは、農業界にイノベーションを起こすという目標に掲げていて、偶然にもエンジニアを探していました。この仕事であれば地元に貢献できるのではないかと考え、彼らが立ち上げた株式会社KOMPEITOにCTOとして参画することにしました。といっても、会社自体は存在していたのですが、事業自体はまだ立ちあがっていなかったんですね(笑)

そのため「どのようなサービスを提供するか」というところからスタートし、実験的に八百屋を始めました。利益構造のどこに問題があって、どうITで変えられるか分析を重ねて誕生したのが、生産者とオフィスで働いている人を結ぶプラットフォーム「OFFICE DE YASAI」でした。

それから約7年携わってきましたが、ある程度インフラ周りも整いましたし、大手企業と資本・業務提携するなど会社自体も成長してきたので、新陳代謝も込めて新しいチャレンジをしようと2019年11月フュービックへ転職しました。

続いて、小峯さんお願いします。

小峯さん:バブルが弾けたくらいの時に実家が経営していたレストランが潰れ、大学を中退せざる得なくなりました。それから半年程はフリーター生活を送っていましたが、大学で情報科学を学んでいてHTMLも書けたのでエンジニアになろうと思い、未経験で採用してもらえるベンチャー企業を探し就職しました。ここでは、タイトなスケジュールで開発するという経験を積みましたが、もっとWEBコンテンツのお仕事したいと思い、ぐるなびへ転職しました。初めはWEBエンジニアの一担当として入社しましたが、ある時、組織長が変わり縦割り組織から横断的な組織へと変更になり、私は各部署を横断的に見るチームへ配属されました。所謂、ミドルウェアのような立場で、フレームワーク開発、レコメンドシステム・KVS・全文検索エンジンの導入などを行いました。

それから30代以降は、もっとWEB業界の幅広い業務へ携わりたいと思いから、ベンチャー企業の1人目エンジニアとして働いたり、事業側の仕事も多くなりました。エンジニアの枠を超えてWEBサイト制作ではPL~運用に携わったり、サポートデスクのトークスクリプトの作成なども経験して、エキテンを運営するデザインワン・ジャパンでエンジニア組織の活性化、新規立ち上げを実施した後、株式会社 Fubic SIの入社に至りました。

フュービックへ感じた成功の可能性

お二人がフュービックへ入社した理由を教えて下さい。

黒木さん:私がフュービックを選んだ理由は、「現実社会に還元すること」に加えて、未来に向かって変化を恐れず挑戦する姿勢でした。フュービックは、既にリアル店舗を140店舗以上抱えているなどリアルな場での接点を持っています。ここで自身のITによる業務改善の経験を発揮することでデジタルトランスフォーメーションを実現し、この会社をヘルステックという領域で成功へ導くことができるのではないかと思いました。

現状、日本の新興企業においてヘルステックで成功していると言い切れる会社はまだないように思います。多くは、テックからリアルにアプローチしますが、私はリアルからテックの流れでないと厳しいではないかと考えており、フュービックだからこそ実現できると信じています。

小峯さん:私がフュービックを選んだ1番の理由はO2O事業に携われるところです。結局ヘルステックというのは、テックの技術だけを持っていても絶対上手くいきません。その点、フュービックは収集するためのリアル店舗を持っていて、さらにはWEBのメディアを持っていて非常に可能性を感じました。

黒木さん:テクノロジーだけでは成功しないのはみんな分かっているじゃないですか。そこに切り込めるのはこの会社しかないのではと可能性を感じますよね。

小峯さん:リピーターの割合が高いビジネスモデルなので、すでにリピーターの蓄積データがあるというのは新規参入企業にはない強みですよね。

もう1つ理由をあげると、以前もみ処らく屋(フュービックが運営しているサービス)というリラクゼーションサロンへよく通っていて、その店舗の店長が現在の役員山口で、会社説明会の時に再会して運命を感じてしまったことです(笑)

お二人は複数の会社を経験してキャリアを築いていますが、振り返ってみてどう思いますか?

黒木さん:私の場合、ITを使っていかに現実社会へ還元するかという1点を貫き、その上でどれだけ自分の力が発揮できる場所があるかを基準に会社を選択してきました。

前職は、0からサービスを立ち上げさらに拡大もしていたので、周りからは離れる理由はないのではと言われることも多かったのですが、同じところにいると挑戦する機会は少なくなくなってくるんですよね。

小峯さん:ずっと1つの場所にいると1歩が出しにくくなりますよね。
私は転職するたびにポジションを変えてきました。色々な企業で様々なポジションを経験したことで、1個のマネジメント手法が上手く行かなかった時の対処方法がいくつも浮かんでくるなど厚みができたので結果的に良かったと思っています。まぁ、私も1社目で上手くブレイクすれば違ったのかもしれませんが・・・・・・(笑)

黒木さん:色々な会社を渡り歩いたことで、コネクションが出来たというのは大きなメリットですね。私は、スペシャリストではなくいかに僕より出来る人を連れてくるというのが仕事なので(笑)

入社後の課題はIT化による事業の加速と拡大

お二人とも昨年11月に入社していますが、現在の所属と役割を教えてください。

黒木さん:私はフュービック本体のCTOをやりつつ、Fubic SIの非常勤で役員をやっています。全体のプロダクトに対して中長期的な戦略を立てて、他の事業部を横断的にサポートすることが主な仕事です。

一方で小峯は、フュービックエスアイのマネージャーとして働いています。小峯はエンジニアメンバーのマネジメントや採用を行うなど事実上VPoEのような立場で動いています。

27期を迎える会社へCTOというポジションで入社しましたが、難しさはありましたか?

黒木さん:フュービックは27期を迎える会社で、CTOというポジションを置くことは初めての試みだったので、正直受け入れられるだろうかという不安はありました。

周りの役員は、店長から昇進して10年20年かけて組織を大きくしてきた方々ばかりだったので、いきなり私がC職として参画しても受け入れられないだろうなと思っていました。

けれど実際は、真逆で「うちIT本当に弱いんで、宜しくお願いします」、「ITを入れることでもっとこの会社を良くしたいし、スタッフの子達ともっと活躍できるようにしてあげたいんです」と声をかけてくれたんです。人間性の高さを感じましたね。

IT化を進める中で、社内から反発はありませんでしたか?

黒木さん:新しいことを導入する際、「もっとこんな事ができるようになるよ。」、「これを導入すると、もっとこういう時間が増えるよ。」とビジョンを見せると、皆さん喜んで受け入れてくれました。

もともとスタッフは皆さんとても人間性が高く、0から誰かを口説いてカルチャーを作らなければいけないということがなかったので非常にやり易いです。

1100名規模でこれだけ皆が同じ方向を向いている会社は初めてです。これも社長自らが社員研修を行っていて、カルチャーの浸透力が高い理由の1つだと思います。

小峯さん:立ち上げの2~3年とかだったら分かりますが、27期でこれというのは本当に驚きですよね。

黒木さん:きっと採用の段階で人間性はすごく見ているんでしょう。正直、スキルは後からいくらでも伸びますが、人間性はなかなか高められるものではないですからね。

入社から半年、どのようなことに取り組んでいますか?

黒木さん:直近ではマイナス部分の解消を意識して業務に取り組んでいます。例えば、今いる人材を最大限に生かすために、新規のデータを解析して事業部が見るべきKPIを提案したり、業務効率化の為にツールの導入を推進したりしています。大変な事も多いですが、結果、ここ半年間でかなり時間の効率化が進んでいる印象です。

エンジニア組織の現状と課題

現在のエンジニア組織はどのような体制ですか?

小峯さん:新宿オフィスのエンジニアチームは、業務委託含めて10名程度です。会社の方針で現在は、新卒から育成していくこということはしておらず、エンジニアになりたいと思ってくれている社員の方が入って来てくれているのでバックグラウンドは様々です。

例えば、『Dr.stretch』で働いていたトレーナーがエンジニアにキャリアチェンジした事例もあります。もちろんプログラマーとしては未経験ですが、Dr.stretchの顧客予約システムを開発する際、現場の話をヒアリングできたり、自身の経験に基づきながら、「こうやって使うからこうしたほうが良いでは?」とアドバイスをくれたります。そのため、より現場に合ったシステムを提供できていると思います。

また、特に国籍は気にしない会社なので、最近はインド人を採用しました。リードエンジニアというにはまだ経験が浅いのですが、将来的にテックリードとして働いていける資質を持っています。

海外の方に接する時、気を付けていることはありますか?

小峯さん:日本人だけでしたら阿吽の呼吸みたいなもので理解してもらえますが、海外の方だとそうはいきません。フュービックは風土を大切にしている為、伝えるべきところは言語化して伝えるようにしています。

現時点でエンジニア組織における課題は何ですか?

黒木さん:もともと弊社エンジニア組織には、モチベーションは高いもののキャリアの長いエンジニアが少なかったため、エンジニア一人一人が自身のキャリアプランを描ききれていない部分があるのが現状です。

そのためまずは、自分が何をしたいのかをイメージしてもらうところから始めて、何を強みとしていきたいか、今何が出来るのかを紐解いていきたいです。

今出来ること(強み)や出来ないこと(弱み)を把握していないと絶対いつか行き詰まってしまうので、しっかり自身の特性を把握してもらったうえで、今組織として何が出来るのかに落とし込んでいければと思います。

今後のビジョン

開発組織のビジョンを教えて下さい。

黒木さん:今は、社内のCMSの開発、toB向けの開発などリリースを控えているプロダクトが多いので、それらの開発を通して力をつけてもらいたいと思っています。

例えば私が「この機能入れよう」という風に答えを出してしまうのは簡単ですが、それでは皆の成長に繋がりませんので、メンバー各々考えて成長して欲しいですね。

小峯さん:私は、5人4チームという体制を作っていきたいと思っています。動いているプロダクトの数とかエンハンストしなければいけないプロダクトの数を考慮するとそれぐらいの人数がいるべきだなと思っています。

会社全体においてIT化のビジョンを教えてください。

黒木さん:中長期的な全プロダクトの統合とかの戦略やイノベーションに関しての課題の検知は私が取り組んでいきたいと思います。一方で、セキュリティなど技術的なところは、小峯と2人で分業しながら進めていこうと思っています。

人については、初めはCTOの私がやるべきだと思っていたのですが、人のマネジメントやリソースの最大化、採用などの人選眼は小峯がすごい持っているんです。私より上手いので、そこは小峯や役員の山口に任せたいと思っています。

小峯さん:黒木が人材や予算などの会社と話を固めてくれて体制を整えてくれているので、私はいかに人材を入れて組織のパフォーマンスを最大化できるかにコミットしていきたいです。

初代CTOとして果たすべき役割

最後は黒木さんに伺います。CTOとして大事なことは何だと思いますか?

黒木さん:前職を含めて一人何役もしなければいけないという経験はあったので、あんまり仕事を選り好みしない姿勢は大事だと思っています。その中でちゃんとCTOとしての視点を持ち続けなければいけないのですが、CTOと言っても業界・業種・企業のフェーズによってやるべきことが異なります。前職は創業期のCTOでしたので、開発以外も、商品のパッキングやデリバリー、営業などとにかくなんでもやって乗り切らなければならない時期もありました。ただ、「自分が今何をやるべきで、やるべきでないことは何なのか」は常に考えて行動する必要があるのです。

フュービックは、会社自体は1100名の規模ですが、まだITでプロダクトをグロースするという段階ではなく、ITが社内の受け皿として機能していかなければという準備段階です。

そのため、全事業部の課題が集まってくるように、困った時にいつでも頼って貰えるような受け皿になれるよう意識しています。また、受け皿になりつつも、それぞれの事業部を大きくするという意識も忘れず取り組んでいきたいです。

今後、CTOとしてどのように会社へ貢献していきたいですか?

黒木さん: 「CTOは何をすべきだ」ということ囚われずに、ゴールに対して手段は問わないでやっていきたいです。今はクリティカルな部分や致命的な部分がないかを見ていきつつ、技術で意思決定するスピードを早めていくことが当面の目標です。

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