目指すは、“事業家集団”。カーリ―ス市場で急成長する企業の事業CTOへ聞く、エンジニアの組織戦略

梅本 雄二 | ナイル株式会社 執行役員 モビリティサービス事業部 事業CTO 兼 ICT推進室 室長

大企業向けBtoBのSIerを経験し、スマホの登場を機にBtoCスマホアプリ・Webサービスの受託開発責任者に。その後Pontaのモバイル系会員基盤システム、EPARKグルメのランチサービスの開発責任者を歴任。2018年にナイル入社。おトクにマイカー 定額カルモくんのサービス企画からカスタマーサポートまでプロダクトの企画・開発・運営全般を担当。2020年7月からICT推進室に就任し全社的な情報セキュリティとDX推進も担う。

ナイル株式会社について

はじめに、貴社の事業内容を教えて下さい。

弊社は「デジタルマーケティングで社会を良くする事業家集団」をビジョンに掲げ、3つの事業を展開しています。

1つ目は、デジタルマーケティング事業。ここでは、法人のお客様に対してSEOをはじめとしたデジタルマーケティングのサポートを行ってます。2つ目は、メディアテクノロジー事業です。月間UU1,000万人超えのアプリ情報メディア「Appliv(アプリヴ)」を主軸に複数メディアの運営をおこなっています。

3つ目のモビリティサービス事業では、「おトクにマイカー 定額カルモくん」というネット完結型の個人向けカーリースサービスを提供しています。ローンチから約3年で累計申し込み者数4万5,000人を突破し、契約者数も2020年昨対比約4倍と右肩上がりに成長しています。

仙台から東京へ。試行錯誤しながら、励んだモノづくり

続いて、梅本さんのキャリアについて伺います。梅本さんが、モノづくりやパソコンへ興味を持ったきっかけや、エンジニアになるまでの経緯を教えて下さい。

幼少期は、ロケットやロボットへ興味がありました。中学生の頃から、パソコンに触れるようになり、徐々にソフトウェアへも関心が高まっていきましたね。中学卒業後は、技術を学べる学校へ行きたいと思い、高専へ進学しました。その後、大学へ入学するタイミングで上京しました。就職活動をする中で何社か内定をいただきましたが、当時の私は、東京で生活することへ違和感を感じていて、地元・仙台へ戻ることにしました。それから、知り合いの伝手を辿り、小さなソフトウェア会社へ入社しました。

そこでは、どのような業務を担当されていましたか?

最初に入社した会社は、私が社員3人目。5次請けで業務システムの開発を行うSIerでした。約10年程在籍していましたが、最終的には、社員は25名程まで増え、私自身もプロジェクトマネージャーという立場を経験しました。

その後、2010年スマホアプリ/WEBのSIer企業へ転職した理由を教えて下さい。

丁度、世の中にスマートフォンが普及し始めた時期。私自身も極めて初期のスマホを買い、使っているうちに、その将来性や面白さへ魅了されていきました。当時、まだ仙台にはスマートフォンの開発を行うような企業はありませんでしたので、スマートフォンの開発経験を積むため、東京の会社へ転職することにしました。

スマートフォンの開発はいかがでしたか?

スマートフォン自体が新しいプロダクトでしたので、世の中全体的に、皆探り探り開発をおこなっていました。私が所属していた会社自体にも、当然知見などありませんので、エンジニアの私も、企画提案やチーム作りなど1から携わることができました。もともとモノづくりが好きでエンジニアになったので、企画~開発までできることに、とてもやりがいを感じていました。

それから何故、事業会社へ転職したのでしょうか?

PMとして多数のプロジェクトを並行して回しており、リリース前やトラブル発生時には休日出勤や深夜残業が当たり前だったこともあり、もう少しワークライフバランスを整えたいと思いから、仕事のコントロールがしやすい事業会社へ転職することにしました。

事業会社では、Pontaのモバイル系会員基盤システム、EPARKグルメのランチサービスの開発責任者を経験しました。Pontaは、大手企業と連携し始めた時期だったので、調整が難しかったです。また、EPARKは、営業の体育会系カルチャーだったので、そのスピード感へ対応するのは大変でしたね。

その後、2018年ナイルへ転職した理由を教えて下さい。

カルチャーと経営層の質が決め手になりました。当時、50-100名規模のベンチャー企業を視野に転職活動をおこない、いくつか内定を頂きました。その中の多くが、「やりたいことは固まってないけどお金ならある」というアピールだったのに対し、ナイルは、「やりたいことは決まっていてお金を使うところを明確化する」という方針でした。リスクヘッジをしながら、アクセルを踏むところは踏むという価値観へ共感したのを覚えています。

また、ナイルの役員は、それぞれが結構違う価値観を持っていて、またお互いの価値観を認めあっています。意見に食い違いがあるのが当たり前みたいな、多様な考えとそこからの議論で会社の成長を目指す経営陣が集まっている組織に惹かれましたね。

開発、マネジメント、セキュリティ―― ジェネラリストとして幅広く業務に携わる日々

ナイル入社当初の状況を教えて下さい。

私がナイルへジョインした当初の開発組織は、全体で15人程。モビリティサービス事業は5人程で開発を行っており、サービスインして3~4ヶ月経った頃でした。

当時の「おトクにマイカー  定額カルモくん」は、融通が利かないシステムで何より開発スピードが遅かったんです。そのため、設計も込みで約3ヶ月かけてリプレイスを行いました。「申し込み」と「データ管理」を疎結合に分けて、1つ1つの影響範囲が小さくなるよう仕組み自体を変えたので、最初の頃は、私自身も手を動かすことが多かったですね。

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梅本さんの役割は、どのように変化していきましたか?

入社半年ほど過ぎた頃、開発チームに加えて、プロダクトまで見るようになりました。その後、執行役員に就任してからは、エンジニアの評価など全体的な所へも関わるようになりましたね。

2020年夏以降は、ICT推進室の室長に就任し、情報セキュリティ周りも見ています。資金調達をおこない、今後さらに情報セキュリティの強化が必要なため、技術的な知見を持ち合わせている私がこの領域も見ることになりました。

守備範囲は非常に広いですね。現在、梅本さんの仕事内容を教えて下さい。

一般的なマーケティングが1割、開発が3割、CS含めた運営全般で2割、採用関連が1割、ICT推進室1割、残りが経営関係という感じです。

実際、色々な業務へ携わることは、メリットもあります。例えば、エンジニア採用時の面接が技術選定に役立つこともあります。現場レベルでどの言語が受け入れられているのかなどリアルな状況を知ることができるので、プログラミング言語のトレンドを知るのに役立っています。

座右の銘は、「手段を目的としない」

御社では、プロジェクト単位で技術や開発手法の選定、チーム構成を変えているようですが、このようにするメリットを教えて下さい。

開発のプロジェクトに求められていることは、QCD【Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)】です。どれが優先されるかは状況に応じて検討する必要があります。

「おトクにマイカー  定額カルモくん」のリプレースの話を例に挙げますと、当時はまだリリース初期。色々とトライアルしてPDCAを回していかなければならない時期でした。そのため、スピードが遅いことは致命的で、Delivery(納期)の改善が最優先事項でした。一方、Quality(品質)については、ユーザーがまだ少ない時期なので、最低限担保できる状態であればよいと判断し、優先順位は落として開発を行いました。

このように、技術選定はQCDと組み合わせて考えていく必要があるため、プロジェクトごとに、コスト面を含めて意思決定していくことで1つ1つを最適化することができると考えています。

プロジェクト単位で技術を変えると、学習コストがかかるという意見もありますが、如何でしょうか?

私の経験から言いますと、学習コストはそこまで大したことないと思っています。スマホアプリ開発、WEBフロント開発など同じ領域での開発の場合、1つの開発言語の基礎を理解していれば、似た言語を習得するのにそう時間はかかりません。

プログラミング言語のトレンドは、数年ごとに変わりますので、私自身もこれまで30以上のプログラミング言語を習得してきました。エンジニアは、日々新しい技術を学んで行かなければなりませんし、それができる人達がエンジニアだと思います。どんどん良いものを取り入れて、生産性や品質を高め、良いプロダクトにしていくべきてはないでしょうか。

また、開発言語そのものより、フレームワークやライブラリがもっと早い頻度で変わっていくものなので、例えばJavaScriptができるというより、Vue.js、React.js、Node.jsなど、どのフレームワークやライブラリをどれくらい理解しているかが大事だと思います。

ナイルのエンジニアの採用におけるポイントを教えてください。

一番は、「技術を手段として捉えているか」を重要視しています。弊社の場合は、極端に技術志向過ぎるエンジニアがあまり合わない会社なので、ビジネスの状況に合わせて必要な技術を選定し切り替えができるかどうかが大切です。

会社全体として「事業家集団」を目標としているように、エンジニアとしてどう実現していくのかと常に伝えています。「手段を目的にしない」は、私の座右の銘ですね。

エンジニアの採用で工夫していることはありますか?

弊社は、エンジニアに限らず、全職種ワークサンプルを導入しています。面接や履歴書とは違った評価基準が出来たので、離職率低下の1つの要因にもなっています。

また、2020年4月には茨城県つくば市にサテライトオフィスを開設し、エンジニアインターン生が20名弱所属しています。正社員が、技術選定、設計、技術指導、重要度や緊急度が高い実装を中心とし、通常の実装はインターンがメインという体制で開発しています。

単純に開発コストの削減という観点で見ると、オフショア開発の方がよいと思います。しかし我々は、インターン生達を単なる労働力というよりは、幅広い実務を経験してもらい、インターンの成長が事業の成長に繋がるようなWin-Winな関係を築いていきたいと思っています。

最後に、これからCTOとして梅本さんがナイルで成し遂げたいことを教えて下さい。

私は東日本大震災が起きた時に仙台にいました。そこで、色々な方々に助けられたので、少しでも何か世の中に恩替えししたいという思いが、仕事のやりがいに感じています。

我々が提供している「おトクにマイカー 定額カルモくん」というサービスは、車がないと生きていけない場所に住んでいて、現金一括払いが難しい方々には、価値ある選択肢の1つです。このようにサービスを通して人々の生活の役に立つこと、役に立ったと感じた人を増やしていくことが私が成し遂げたいことです。

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