プロダクト作りの在り方を探るコラム第11回|プロダクトマネジメントで着目すべき観点「ターンアラウンド」

プロダクトマネジメントの必要性が高まってきています。プロダクトマネジメントとは、プロダクトのライフサイクルに応じた適時適切な施策や体制作り、進行を取るためのすべです。ですから、その責務は広範囲に渡ります。

初期の仮説立案とPSfitを目指した検証。MVPの特定と開発をアジャイルに。
チームのフォーメーションを機動的に変えながら、プロダクト作りの最適化を進めていく。やがて、PSfitを越えたプロダクトはグロースに向き合うことになる。

プロダクトマネジメントとして捉えていく必要がある観点はこのとおり多岐に渡ります。
ゆくゆく、これら全てについて取り組む必要がありますが、一度に一気に兼ね備えていくのは個人はもちろん、チームとしても難しいところです。では、プロダクトマネジメントとして、まず何に着眼してはじめればよいのでしょうか? それが、今回お伝えする「ターンアラウンド」という切り口です。

ターンアラウンドとは?

ターンアラウンドとは「プロダクトに必要な構想を練り、その働きかけを想定ユーザーに行い、結果を集めて学び直す」ために要する時間のことです。

ここでは「プロダクトを世の中に提供する」が働きかけの一例として挙げています。実際には、想定ユーザーへの働きかけにあたるものは様々考えられます。

例えば、顧客インタビューが該当します。想定ユーザーについての課題仮説やソリューションの仮設を仮説キャンバスで立案し、何を聞くべきか整理し、働きかけを行う(インタビューをする)。そうすると、相手からインタビュー結果としてまとまった反応を得ることができます。そうした反応をもとに、自分たち自身の理解を正していく。この一連の活動に必要な時間が「ターンアラウンド」です。

自分たちの理解=仮説は、初期段階は特にあやふやで、確実に分かっていることが少ない状態です。そのあやふやな理解のまま、プロダクト作りを進めていくわけにはいきません。ある一定の確からしさ=正しい理解を得て、プロダクト作りを進めていく必要があります。この正しい理解を得るための活動が、顧客インタビューやプロトタイプ検証であり、相手への働きかけとなるわけです。

このターンアラウンドの期間というのは、逆にいうと「正しい理解が得られていない状態」「相手について理解が不足している状態」と言えるわけです。つまり、「間違えている期間」とも言えるわけです。

この期間で下す判断は当たるも八卦と言ったもので、相応のリスクを抱えることになります。プロダクトマネジメントの視点からは、できるだけ「間違えている期間」を最短にしておきたいところです。踏まえると、いかにして、このターンアラウンドを短くするか?がプロダクトマネジメント上の肝となるわけです。

ターンアラウンドを短くする段階の戦略

では、ターンアラウンドを短くするためには具体的にどのような戦略を取ればよいのでしょうか。一度に様々な観点を大規模に検証していくのではなく、小さく繰り返し的に段階的な検証を行っていく必要があります。

出来る限りターンアラウンドを短くするために、検証すべき焦点を絞り、早く学びが得られる手段を取る、という方針を取ることになります。

例えば、最初の顧客インタビューは、仮説の立案から対象者リクルーティング、インタビュー実施、結果の整理まで1ヶ月程度で実施が可能です。3ヶ月かけて、プロトタイプ検証を行って、最初の理解が「この課題設定ではなかった」というのではあまりにもったいなさすぎます。この程度の理解であれば1ヶ月の顧客インタビューで把握ができます。

ただし、同じ検証手段を取り続けたとしても、必ず壁にあたります。どれだけ顧客インタビューを重ねても、新たな情報、新たな理解が得られない、という段階に達します。ここに至って、次の検証に移っていくべきです。単なる言葉による検証ではなく、実際に想定しているプロダクトのイメージがわかるもの、ビジュアルイメージや少し動きのあるプロトタイプを交えていく。検証物のリアリティが増すことによって、相手の反応もリアルへと近づいていくことになります。

こうした、段階の検証を重ねていく先に、MVP開発とその検証を行う到達点を迎えることができ、価値仮説が見込めるプロダクト作りを進めていくことができるのです。段階の検証をいかに早く走り抜けていくか、プロダクトマネジメントで最初の前提として置くポイントはここに尽きます。

アジャイルもターンアラウンド戦略の一つ

さて、MVP開発に至っては、アジャイルにプロダクト作りを行うことがたいていの場合と思います。実はアジャイル開発も、ターンアラウンドを短くするための作戦と言えるのです。

アジャイル開発の一つスクラムの場合、スプリントというタイムボックス(期間)を設定して、このスプリントを繰り返し進めていくことでプロダクトを作り上げていくことになります。スプリントは、最初に何を作るべきかを決めて(スプリントプランニング)、実際に開発を行い、スプリントの最後にそのアウトプットを確認し、フィードバックを行います(スプリントレビュー)。これは、まさしく、働きかける→反応を得る→理解を正す、サイクルと合致します。

一気に、大規模に、ソフトウェアを想定のもと作っていくのではなく、機能開発レベルでターンアラウンドを短くすることで、「間違えている期間」を最短にする。特にソフトウェア開発はプロダクトマネジメントにおいて、最も時間とコストがかかる「働きかけ」と言え、間違えている期間が長いほど、その損失は大きくなります。こうした観点からも作る範囲を最小限に抑え(MVP)、早く最初の理解を得るようにする、というMVP戦略はプロダクト作りとして的を射ていると言えます。

やるべきことに圧倒されて、何から取り組めばよいか分からないというプロダクトマネージャーに向けて伝えたいのは、「何をやるべきか?」という問いは常に該当するタスクを探し回ることになり、これでは本質を捉え損ねることがあるということです。何をやるべきかというタスクは、プロダクトのテーマ、状態によって、常に変わっていくものです。

ですから、質問自体を変えましょう。問うべきは、「どうすればターンアラウンドを短く最初の理解を得られるのか?」です。

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