ママの3人に1人が利用するアプリ「ママリ」のCTOが語る、拡大期のエンジニア組織がやるべきこと

“ママの一歩を支える”をブランドミッションに、国内最大級のママ向けサービス「ママリ」を運営するコネヒト株式会社。2019年に出産した女性の3人に1人(※)が利用するなど高いママ認知を得る同サービスで開発組織を支えてきたCTO伊藤氏へお話を伺いました。

※:「ママリ」内の出産予定日を設定したユーザー数と、厚生労働省発表「人口動態統計」の出生数から算出。

オンラインインタビューに応じるコネヒト株式会社 ​執行役員 CTO伊藤氏
伊藤 翔(いとう しょう)|コネヒト株式会社 ​執行役員 CTO

1986年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、金融系のシステム会社に入社。その後、Web系の開発会社を経て、Supershipに入社。17年にグループ会社であったコネヒトに出向し「ママリプレミアム」の立ち上げを経験。そして、リードエンジニアや開発部部長を歴任し、19年6月にCTOへ就任。

コネヒト株式会社について

御社の事業内容を教えて下さい。

コネヒトは、「ママの一歩を支える」をブランドミッションのもと情報サイト・Q&Aアプリ「ママリ」を運営し、記事やQ&Aのやりとりを通してママが抱える悩み事を解消しています。Q&Aアプリは、質問から約2〜3分で回答が返ってくる熱量の高いコミュニティで、現時点ではアプリ会員登録数が250万人と、その年に出産するママの3人に1人が利用しています。

コネヒトに出会うまでのキャリア

伊藤さんがエンジニアを目指したきっかけを教えていただけますか?

私は、小さい頃からものづくりに携わる仕事がしたいと思っていました。そう思うようになった背景は大きく2つあります。1つ目は、LEGOがとても好きで、ブロックを組み立てて何か一つのものを作り上げること自体に楽しさを覚えたことです。2つ目は、小学生の時に面白がって描いていた漫画を友人らが面白がってくれたことがありました。この時、自分が作ったものに対して誰かの反応を得られることに喜びを感じました。この2つの経験からものづくりに携わる仕事をしたいと思うようになりました。

それからソフトウェアエンジニア(以下、エンジニア)を目指すことに決めたのは就職活動の時でした。もともと映像制作をしていたこともあり、当初は広告の制作会社を中心に受けていました。けれど、もっと幅広く受けてみようとものづくりを軸に視野を広げ始めました。実際、大学の授業でFlashやProcessingを学ぶ機会があったのですが、プログラミングができると映像制作する時も表現の幅が広がり出来ることが増えると感じたので、エンジニアになることを決意しました。当時はあまり業界のことを熟知していなかったのですが、漠然と「仕事でしか経験できない規模の大きなことに挑戦してみたい」という思いがあり、金融系のシステム会社へ就職を決めました。

その後、Web系の開発会社を経て、自社サービスへ転職されていますがその理由を教えてください。

SIerや受託の場合は、リリースすることがひとつのゴールのため、リリースした後ユーザーにどう使われているかを見守る機会が多くありません。1つのサービスをリリース後も見守っていく仕事に就きたいと思いSupershipへ転職を決めました。

最初は、サーバーサイドのエンジニアとして入社し、サーバーサイドの開発に携わっていましたが、途中からマネージャー業務も行うようになり、ピープルマネジメントやスクラムマスターのポジションを経験しました。これまでもジュニアのエンジニアへの教育は経験したことがありますが、きちんと1on1や目標設定、評価業務を行うのはSupershipが初めての経験でした。

コネヒト株式会社へ出向することになった背景を教えて下さい。

コネヒトはSupershipのグループ会社だったため、もともと多少の交流はありました。ある時、コネヒト側のエンジニアの増員が必要になり、Supershipで「ママリ」同様のコミュニティサービス運営に携わっていた私に声がかかり、コネヒトへ出向することになりました。

Supershipも良い会社だったので正直迷いましたが、Supershipで携わっていたコミュニティサービスは何でも自由に話すことができるインターネット感が強いサービスである一方、「ママリ」はマイナスをゼロにするような社会貢献性が高いサービスである点に惹かれたのが決め手でした。

10→100のフェーズで2代目CTOとして取り組んだこと

伊藤さんが出向した当時のコネヒトの状況を教えて下さい。

今は、その年に出産をするママの3人に1人が利用しているサービスですが、2017年当時は5人に1人が利用している規模のサービスでした。また、私がコネヒトへ出向した当時は、「ママリ」の収益軸を広告から別のところにしようという動きがあり、月額のサブスクリプションサービス「ママリプレミアム」を立ち上げるところでした。「ママリプレミアム」では、より「おトク」「便利」「あんしん」の役立つコンテンツを提供すべく、ママが日常的に使用する店舗などのクーポンやアプリ内の投稿を人気順で検索できるよう機能の拡充を行いました。

それから伊藤さんのキャリアにとって大きな出来事の1つにCTO就任があると思いますが、CTOになるまでの経緯を教えて下さい。

2019年6月創業者で初代CTOの島田さんから引き継ぐ形でCTOに就任しましたが、打診されたのは2018年2月位でした。当時、CTOを務めていた島田とはよくご飯を食べに行っていたのですが、その日はいつもより良いお店へ連れていってくれたので、何か大事な話があるのでは、と思いましたね(笑)

予想は的中し、島田から「CTOを私に任せたい」と言われました。私自身、丁度社会人10年目の節目で、自身のキャリアについて考えていた時期でもありました。その中で、創業から8年間務めてきたCTO職を引き継ぐことは、チャレンジングでなかなか経験できるものではないと思い、その場で引き受けることにしました。常に「迷った時は1番難しいものを選ぶ」と決めているので、今となっては良い選択をしたと思っています。その後、数ヶ月かけてヒアリングをしながら徐々にCTO業務を引継ぎました。

創業者から引き継いだ2代目CTOはプレッシャーも大きかったと思いますが、当時を振り返ってみて難しかったことはありますか?

そもそも、「何をすることがCTOなのか?」の明確な答えがないことが難しかったですね。そのため、CTOになる前は、本やオンライン動画を通して基本的なファイナンスの知識や会社法を勉強しました。CTOになった後は、CTO同士の交流会へ参加し、他社のCTOと一緒に話をして意見交換を行っています。

CTOになって業務内容はどのように変わりましたか?

大きく変わったことは3つあります。

1つ目に、戦略について考える時間が増えました。今までは組織マネジメントといっても半年~1年の短期的な目標を立てることが多かったのですが、CTOになってからは中長期的な戦略を立てる必要があるため、おのずとそこに割く時間が増えました。

2つ目に、採用にかける時間が増えました。最近では求める人物像の言語化を行っています。前任のCTOの時は、0→1のフェーズなので「会社を成長させること」が第一ミッションであるが故にどういう人が欲しいかは共通認識はあるものの、明確に言語化されていませんでした。一方、私がCTOになったフェーズは10→100のフェーズのため、面接を行う皆が同じ目線で採用候補者を見極めるための共通言語が必要なタイミングだと感じました。

3つ目に、会社全体の課題解決に費やす時間が増えました。経営会議に出席するようになり、会社全体の課題解決をするために開発組織はどういうことをやっていくべきなのかを考えるようになりました。CTOになってからは事業全体を見るようになり、目線が大きく変わりましたね。

エンジニア採用において大変なことはありますか?

私自身、純粋にコミュニティサービスとしての面白さは感じつつも、女性向けのサービスなので自身がユーザー視点を持つときに分かりにくさはありました。けれども、サービスに触れていくうちに、ママが持つ課題は想像以上に沢山あることに気づかされました。

一般的に、日本のエンジニアは男性の割合が高いので、どうしても事業に興味を持ってくれる割合は低くなりがちです。そのため、少しでも興味持ってくれたエンジニアに対しては、「日本の社会問題解決に繋がる重大なサービスを運用している」という点をきちんと説明するように心がけています。

加えて、エンジニアリング観点では、特定のターゲットのほとんどが使っており、すぐにレスがくる熱量のあるインターネットサービスは他にそうないので、そこに面白みを感じてもらうように話をしています。実際、ユーザーインタビューは毎週行っており(現在は行っておらず、コロナの影響が落ち着いたら再開予定)、入社してすぐにユーザーとお話する機会があるので、モチベーションアップにも繋がっています。

但し、前提として「サービス志向が強いエンジニア」を採用しようと思っているので、技術は手段という考え方を持っているかどうかは非常に重要視しています。

ボトムアップな組織が目指すもの

業務に取り組むコネヒトの開発メンバー
現在の開発組織の体制を教えて下さい。

開発部は、エンジニアとデザイナー計16名が所属しており、以下3つのグループに分かれています。

  1. プロダクト開発グループ
    プロダクトオーナーやディレクターと一緒に、「ママリ」の運用改善や機能追加を通してプロダクトグロースを担っています。いわゆる、事業会社の開発部門というようなイメージです。
  2. テクノロジー推進グループ
    このグループは今年作ったグループで、主に技術駆動でプロダクトを伸ばすことに従事しています。1年半ほど前にJOINした機械学習のエンジニアたちが所属しており、記事レコメンドやカテゴリ類推機能等の機械学習をプロダクトに導入しています。
  3. デザイングループ
    デザイナーが所属しており、アプリに関わるUIやデザインはもちろんのこと、社内全体のクリエイティブの作成を行っています。
コネヒトのエンジニア組織の特徴について教えて下さい。

ボトムアップで組織を改善していく風土が強いです。具体的に言うと、もともと弊社は開発手法としてスクラムを取り入れているのですが、最近はスクラムマスターを輪番制にするような取り組みも行っています。これは日々の開発プロセスの中から生まれた取り組みで、「こういう課題があるから次はこうしよう」という声がどんどんボトムアップで挙がってくるような組織です。他には、ご飯を食べながら最近知ったことをカジュアルに話す社内LT会も隔週で開催していますが、こちらも私が始めたわけではなく、メンバーの発案から始まりました。

最近では、評価制度をリニューアルしたのですが、これも私がトップダウンで決めるというよりは、現状の課題感をメンバーへヒアリングし、実際にアイディアをもらいながら作りました。特に技術的な課題への嗅覚は、普段コードを書いている人の方が絶対あると思います。それらに対してはどんどん意見を出して欲しいので、ボトムアップで意見が上がってきやすい雰囲気になっているのはとても良い傾向だと思っています。

どうしたらボトムアップな組織を作れるのでしょうか?

(広報担当)伊藤は威圧感がない性格なので、メンバーから見ても相談しやすいのではないでしょうか。部外から見ていてもメンバーとしっかりコミュニケーションをとっているイメージがあります。

また、伊藤の場合は、会社のセキュリティ面も見ているので、コロナの影響で在宅業務を余儀なくされた時も社員が在宅するための準備を率先して取り組んでくれました。開発部に留まらず、全社員が安心して働ける環境作りもしてくれていて他部署からの信頼も厚いです。

エンジニアの評価について工夫している点を教えて下さい。

エンジニアの評価は、成果だけではなくプロセスも評価するようにしています。具体的には、毎月振り返りシートというもの使い、事業KPI等の目標を達成するために実際にやったこととその中で工夫したことを書いてもらい、マネージャーと毎月向き直りの時間を取っています。

評価で一番大事なのは、評価する側と評価される側のお互いの納得感だと思うので、このままで問題ないのかを短いスパンでコミュニケーションを取ることで、評価のタイミングで評価者と評価側で認識齟齬が起きないように気を付けています。

最後に、今後、CTOとして達成したい目標や夢を教えて下さい。

開発組織を成長させていくことはもちろん大切ですが、CTOはボードメンバーの一員なので事業を成長させるために、エンジニアリング的な視点や考え方を全社に浸透させていく活動も重要になってくると思います。

また、私にはコネヒトでテックカンファレンスを開催するという夢があります。理由としては、純粋にテックカンファレンスが面白そうだからというのも一つですが、テックカンファレンスが出来る企業は、まず、事業できちんと成果を出しているという前提があります。且つ、テクノロジーで会社を成長させている必要もあります。そうじゃないと、話すネタがありませんからね。さらには、業界としてテックの凄さを認知されていないと集客もできません。それ故、テックカンファレンスが開催できるというのは、その3つ全てを満たしている状態だと思っています。ですので、テックカンファレンスを1つの到達点として、そんな企業になれるよう組織作りに努めていきたいと思います。

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