プロダクト作りの在り方を探るコラム第12回|スプリントゴールでプロダクトマネジメントをガイドする

スクラムでプロダクト開発を進めていく際、着目するべき観点は多岐に渡ります。チームとして、プロダクトとして、ビジネスとして。その中でも、もっと分かりやすく、文脈に依存せず、捉えるべきものに何があるのか。ここでは、「スプリントゴール」を挙げます。

スプリントゴールをチームで捉えられているか

スプリントゴールとは何でしょうか。もちろん、スクラムガイドを引きましょう。

スプリントゴールはスプリントの唯一の目的である。スプリントゴールは開発者が確約するものだが、スプリントゴールを達成するために必要となる作業に対しては柔軟性をもたらす。スプリントゴールはまた、一貫性と集中を生み出し、スクラムチームに一致団結した作業を促すものでもある。

(引用:スクラムガイド

スプリントにおける唯一の目的、チームで果たすべきことということですね。その効用としては、狙いが定まることでお互いの活動に整合性を生み出し、チームとしての集中を高め、期待する結果を出せるようにすることが挙げられます。

スプリントゴールを決めない理由

スプリントゴールを決めない理由は無いように思えますね。ですが、意外とスプリントゴールを置いていないチームは少なくないと見ています。一体なぜなのでしょうか。

2つの理由があります。

一つは、あえて「決めていない」。ゴール、目標といったものを置くべきではない、置いてしまうとチームの視界が狭まってしまうといった懸念に基づくものです。「プロダクト作りは不確実性の高いものだから」といった枕詞によって、目標を決めていませんという判断を下しているチームもあるかもしれません。

この「不確実性が高い」という言葉は随分と流布して、市民権を得ていると思いますが、そろそろ扱いに気をつけた方が良いでしょう。そもそも不確実性が高いとは何なのか? 何がどうわからないのか、いつまでも分からないことなのか、分かるような努めはしたのか、そのまま分からなくて勝ち目があるのか、こうした問いに本当に答えていなくて良いのか。つまり、この言葉を「何も決めないでいる」ことのエクスキューズにしていないか。

さて、スプリントゴールを決めていない、もう一つの理由としてあるのは「決められない」です。プロダクトとして何を作るべきか、何を試すべきか、判然としない。チームもまだ結成されたばかりで、お互いに何がコミットメントできるのか意思決定できない。正しくゴールを決められる状況にはなく、「決めないでいる」を意図的に選択している、選択せざる得ない。

スプリントゴールを決めていないのは、どちらかではないでしょうか。あるいは、ひょっとしたら「決める時間がない」もあるかもしれませんね!

スプリントゴールを決めないことの「意味」

スプリントゴールを決めずに進めることはプロダクト作りを不利にします。「決めていない」場合は、チームが獲得したいこと、期待したい結果にフォーカスできていないということです。

プロダクト作りにおいて、作り進めるプロダクトがどうなれば良いという「正解」をあらかじめはっきりと定義できることはほぼ無いでしょう。しかし、微分して状況を捉えた場合、このスプリント、つまり少なくともこの1〜2週間で何をなすべきなのかという「仮説」すら本当に立たないのか。

(遠くを眺めてもぼんやりしているけど、近くをみるともう少しはっきりみえる挿絵なんかがあると良い)

もしそうだとしたら、相当に手ぶらで臨まなければならない仕事と言えます。そのような状況下で本当に「プロダクトを作る」ということが妥当なのかどうか、問い直すことが先でしょう。分からない状況であるならば、その分からない度合いに応じた活動を取るべきです。

こうして考えていくと、スプリントゴールを「決められない」場合は、「状況は曖昧模糊としていて、この先何がどうなるか分からない、今何を成すべきかも分からない」そうした状況判断を行っている、ということに他なりません。もとより想定してプロダクト作りに臨んでいるのかもしれませんが、難易度の高い状況であるのには違いありません。そうした状況判断、理解が、チームはもちろん、取り巻く関係者とも合致しているか。ここが合っていないと、先々に迎える展開も分が悪くなることでしょう。

たいていの場合、目の前の1〜2週間で、何を分かりたいか、何を学びたいか、踏まえてチームとして何に取り組むべきか、言語化することができます。はっきりと判断できない状況であっても、曖昧さに心を負かされることなく、仮説でも良いからスプリントゴールを置いてみる。そうすることで、冒頭にあげた一貫性と集中、協働がチームに芽生え始めるのです。たとえ、取り組んだことが十分な結果に繋がらないとしても、ピンとが外れた目標設定だったとしても、チームはそこから学びを得ることができます。この方角ではなかった、次は違う方向で取り組もう、と。

チームのジャーニーに濃淡をつける

そもそも、人すなわちチームは、延々と同じ調子、勢いで仕事に取り組むことは難しいということを前提に置いておきましょう。目標や辿り着く先が延々と分からないまま、ただひたすら毎日、毎スプリント力の限りやっていく…なんてことは人間らしい活動ではありません。人の調子が1日の中でも変わっていくことがあるように、チームもまたただ闇雲に努め続けようとするのではなく、力の入れ具合に濃淡をつけるべきです。

そう、スプリントゴールによって、この「チームとしてどのくらい力を入れて取り組むのか」を決めることができるのです。常に高みを狙ったゴールを置けばよいわけではない。チームの状態に無理が続いているならば、活動量や取り組み無いようの調整を行うべきです。

「ゴールなんて決められる仕事ではない!」、その勇ましさは良しとして。実際には決めないでいることの不利に気づいていない、決められていないだけということが無いように。「ゴールを置こうとしていみる」それだけで、進む理解もあります。

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