おやつのサブスク「snaq.me」CTOが語る、パーソナライズを加速するためのテクノロジー活用法

おやつ体験BOX「snaq.me」を提供する株式会社スナックミー。本日は同社で創業時からCTOを務める三好氏に、スナックミー誕生までの秘話や今後の戦略について伺いました。

三好 隼人|株式会社スナックミー CTO& co-founder

1991年生まれ。2013年東京理科大学工学部建築学科卒業後、建築設計事務所へ勤務。その後、ソフトウェアエンジニアへキャリアチェンジし、2014年、geechs株式会社へ入社。技術本部のリーダーとしてゴルフアプリのプロジェクトマネージャーを経験。2015年、株式会社スナックミーを創業以降、CTOとしてエンジニアリングチームを率いている。

株式会社スナックミーについて

自分好みのおやつ体験BOX(8種類)が、定期的にポストに届く
御社の事業内容を教えて下さい。

弊社は、「新しいおやつ体験を創造し、おやつの時間の価値を高める」をミッションに、美味しくてワクワクするような体験を提供しています。

メイン事業であるおやつのサブスクリプションサービス「snaq.me」では、日本のマルシェにあるような素材の味を生かした安心安全なおやつを、自社独自開発のアルゴリズムを駆使して、お客様一人一人の好みを導き出しお届けしております。

建築設計士からITエンジニアへキャリアチェンジするまで

プログラミングとの出会いを教えて下さい。

私は、昔から自他ともに認める理系人間でしたが、心の中では「理系の道には進みたくないな」と思っていました。高校の時、テレビドラマ『結婚できない男』を見たことをきっかけに建築へ興味を持ち、東京理科大学の工学部建築学科へ進学しました。

けれども、大学には自分よりも才能がある人が沢山いて、だんだんと建築には向いていないな、と思うようになりました。一部、照明・色・空調といった環境に関わる分野については楽しめていたため、ゆくゆくはこれらを研究する道に進めたらよいかな、と思いながら大学生活を過ごしていました。

プログラミングには、大学2年生の時に初めて授業で触れましたが、当時は全然プログラミングを楽しいと思えず、出来たという感覚もありませんでした。そのため、当時の私からすると、今こうしてエンジニアとして働いているとは到底想像出来なかったと思います(笑)

それからどのようなきっかけでエンジニアへキャリアチェンジしたのでしょうか?

もともと大学卒業後は、大学院に行こうと思っていたのですが、時間に余裕が出てきた大学3年の時、「大学にいても全然成長していないし、このままでは駄目になってしまう」と危機感を覚えたので、環境を変えるためベンチャーへ就職する道を選択しました。

大学卒業後は、ベンチャー系リノベーション会社という立ち位置の設計事務所へ入り、図面を描いたり、現場を視察したりしましたが、ここで3ヶ月位経った頃、私がやっている作業は、パターン化された中の同じ作業の繰り返しすぎないということに気づきました。

「もっと自分で何かを作れるようになりたい」と思い始めた頃、丁度、会社の上司が「セブで英語とプログラミングをタダで学べるプログラムがあるらしい」ということを教えてくれました。もともと理系人間なので、何かを作るためにプログラミングを身に付けることは良い選択だと思い、そのプログラムを提供していたgeechs株式会社(以下、geechs)の選考を受けました。

当時のgeechsは、丁度、自社エンジニアの育成に力を入れ始めた時で、私はその1期生としてセブ島で英語とプログラミングの研修を受けていました。セブ島にいる期間も選考だったため、危機感を持ちながら勉強に励んでいましたね。

「全くプログラミングができる気がしなかった」状態から、チームを引っ張るリーダーになるまで

プログラミングの勉強はいかがでしたか?

セブの研修では、最初にアプリ開発を学びましたが、”できる”という感覚を持てませんでした。正直、PHPでWEBサービスを作っていた時は、難しすぎて、「私はプログラミング向いてないのでは?」とまで思いましたね(笑)しかし、大学で学んでいた時よりかは、エラーがきちんと出たり、何に躓いているのか見えていたので、まだ続けられるモチベーションはありました。

それから、半年間の研修を終え、日本に戻り、いよいよ本格的に開発をスタートしたのですが、これが全く出来なかったんです。私としては、この半年間の学習時間と量には自信を持っていたので、とても焦りましたね。それから、新規のプロジェクトへアサインされて、上司に教わりながら開発を行い1~2ヶ月経った頃ようやく、セブ島で学んできたことのパーツが埋まっていくような感覚が芽生え、徐々に教えてもらってないことでも自分で進められるようになりました。

その後、どのようにして技術部のリーダーになったのでしょうか?

私は、geechs初の自社開発案件であるゴルフのサービスに運よくアサインされ開発を行っていましたが、ある時、そこでリーダー(PM)を担当していた人が、社内で別のプロジェクトを立ち上げることになったため、その案件のリーダーが不在になりました。当初、インフラ周りを担当していたSESの2名の契約が切れ、途中から私が引き継いでおり、システム全体を把握していたこともあり、「リーダーをやってみないか」と打診されました。

周りも経験が浅いメンバーが多く若さと勢いで進めていた感じだったので、これからどのように進めていくべきかということは悩みましたが、引き受けること自体に不安はありませんでした。

リーダーを経験してみていかがでしたか?

勝手も分からない、進捗管理のノウハウも持ち合わせていない、という感じだったので、まずは、困ったことがあった時サポートできるよう、朝に業務内容の確認をし、夕方に進捗を聞くというコミュニケーションを取り始めました。今思うと、リーダーとして進め方にしろ意思決定にしろ全てが中途半端だったように思います。

スナックミー創業。おやつのサブスク「snaq.me」が誕生まで

スナックミーの創業メンバー(代表の服部さん、COOの三田村さん)との出会いや創業の経緯を教えて下さい。

代表の服部とは、新卒で入社した建築会社で学生インターンをしていた時に出会いました。当時、一緒に作業することも多く、服部がDeNAへ転職して以降も月1回ほどご飯行くような関係性で、いずれ起業したいという話をしていました。

服部と三田村の出会いは、服部がDeNAで働いていた時だったそうですが、ある日服部が週末に代々木公園を散歩していたら、偶然三田村とすれ違ったようで、それがきっかけで、2人の起業に向けた週末会議が始まったそうなんです(笑)私も、服部に誘われて、この週末会議に一緒に参加するようになり、アイディア出しや簡単なディスカッションするようになり、2015年の年明けくらいに3人で会社を創業しました。

お菓子のサブスクリプションというコンセプトは、どのようにして生まれたのでしょうか?

私以外のメンバーが、結婚していてお子さんがいたという点が大きかったように思います。服部が「娘に食べさせるお菓子がない。コンビニで娘がお菓子を欲しがるけれど、添加物が気になってあげられない」という話をしていました。また、創業メンバーの中でも「ラーメンやジャンクフードなど美味しいものって身体によくないよね。美味しいもので安心して食べられるものって少ないよね」という共通認識がありました。

そこで色々調べていくうちに、イギリスで「Graze」という身体に優しいスナック菓子のサブスクリプション会社が存在することを知り、日本の市場でもニーズがあるのか調べるために食品EXPOへ行ってサプライヤーへインタビューしたり、知人に話を聞いたりしました。結果、思ったよりニーズがありそうだったので、「このコンセプトでいこう」と、お菓子のラインナップを30品程揃えて「snaq.me」をスタートしました。

また、当時からサブスクリプションサービスとしてスタートした理由は、ベンチマークしていた海外の企業が基本的にサブスクリプションモデルだったこともあり、単品販売だと上手く回らないのではという予測が立ったためです。

3名とも異業種から飛び込んでいますが、食品業界周りの知識やノウハウはどのように学んでいったのでしょうか?

食品業界の流れの全体的なところは、三田村がキャッチアップをして、私は、三田村から共有してもらった情報をもとに、どのようにしてシステムへ落とし込むかという点に注力していました。

それ以降は、他社の事例を参考にしたり、実際に失敗を経験しながら改善を繰り返していきました。

例えば、発送のミスを削減するために、バーコードを通して音声で読み取りできたらよいな、と思い、他社様からいくつか営業してもらいました。仕組みを理解していくうちに、フレキシブルさやコスト等の観点から外注ではなく内製化した方が良いという判断に至り、内製で開発を行い、今の「音声ピッキング」という手法を導入しました。

入社当初、ソフトウェアエンジニア歴1年半でジョインしていますが、技術力に不安はありませんでしたか?

サイトを作ること自体はなんとか出来たのですが、アーキテクチャーの部分は少し不安がありました。ただ、スタートアップの場合は、AWSが手厚い支援してくれるため、個別相談会で話を聞いてもらったり、ディスカッションしたりして足りない知識を補っていました。また、おやつを選ぶレコメンドの部分は、詳しい人に人づてに聞いたりして進めていきました。

「お菓子(モノ)を売るのではなく、おやつ(体験)を売る」の発想はいつ頃生まれたのでしょうか?

数年前に所謂”サブスク離れ”が囁かれた頃、「どうすればユーザーがサイトで購入し続けてくれるか」を考えました。

例えば、スナックミーのお菓子を好きな人がいて、Amazonや楽天といった大手ECサイトで同じようなお菓子を買うことができたならば、公式で買う理由がなくなってしまいます。「どうやって公式で買うことの付加価値を付けるか」を考えた時、おやつ自体もそうですが、おやつを開ける時のワクワク感を高めることも大切だと思いました。

その「おやつを開けて、食べて、美味しいというところまでの体験(=おやつ体験)」を提供するために、もともと無造作な段ボールにお菓子を詰めただけだったところを、写真を絵葉書のように添えるというところから始まり、毎回BOXを変えたり、オペレーションを整え自社製造ラインを設けたりと、徐々に改良していき公式ならではの付加価値をつけていきました。

ユーザーインタビューは、どのように行っていますか?

ユーザーインタビューの際は、「スナックミーを気に入って使ってくれている人は、どんな点を気に入っているのか」を大切にしています。時々、途中で辞めてしまったユーザーへのインタビューも行いますが、それよりも何が良かったから続けているのかという長所を伸ばした方が最終的には色々な人へ愛されるんではないかと思い、現在は気に入ってくれている方の意見を反映することを中心に行っています。

お菓子と一緒に冊子を同封したり、パッケージを透明にしておやつが見えるようにしたのは、ユーザーインタビューの意見を参考にしましたね。

もちろん、データで「アクションが増えている」など分かることもありますが、「何が原因で増えているのか」などデータでは分からないところもあるので、弊社はユーザーインタビューを大切にしていて基本的には毎週行っています。

現在は、顧客とのコミュニケーションは9割以上がLINEとのことですが、LINEを選んでいる理由を教えてください。

最初にLINEを選んだのは、アプリ開発するリソース不足だったためですが、問い合わせもできて、通知も送れるという手軽にできるminiアプリのような感覚で使える点が良いなと思って選びました。

また、実際使ってみると、メールよりLINEの方が気軽にメッセージを送れるなど距離感が近い点や、お年寄りから若い子までUXの理解が高い点など含めてベストな選択だったように思います。

おかし体験=「snaq.me」と連想されるブランドにしたい

現在の組織体制と三好さんの業務内容を教えて下さい。

組織創業当時エンジニアが私1名でしたが、今は6名になりました。私の業務の割合は、採用3割、プログラミングが3割、残りがマネジメントといった感じです。

現在の課題や課題に対して取り組みたいことを教えて下さい。

1つに、「製造からの一連の流れ(原料の調達~出荷まで)」をどう作るかは、今大きなミッションだと思っています。現時点では、完成した商品の在庫管理はある程度出来ているのですが、製造したものがどう出荷していったのかまできちんと把握ができると、今後「snaq.me」以外の商品のサブスクを横展開する時、強みになると思っています。

2つ目に、「おやつを選ぶアルゴリズム」がまだまだ未完成だということはずっと課題に感じています。商品は良いのに、「おやつを選ぶ軸」が原因で辞めてしまうユーザーがいたとしたら、それはエンジニアの責任が大きいと思います。SNSで、「自分好みのお菓子が来た」という嬉しいという投稿を見ることも増えてきましたが、まだまだ改善していかなければと思っています。その1つとして、個人の嗜好の部分や食べた時間なども考慮していきたいですね。

3つ目に、ユーザー体験をさらに向上するため、フロント開発にもより力を入れていきたいと考えています。「snaq.me」では、”おやつ診断”でおやつの好みや食べる時間などを選択するところからユーザー体験が始まります。このユーザー体験は、UI/UXによって大きく変わってきますので、社内では実装したことに対するユーザーの反応を毎日感じられるよう環境を整えています。今後は、小さなA/Bテストやユーザーの要望から生まれた大胆な機能開発など様々な観点から取り組んでいきたいと思っています。

最後に、三好さんがスナックミーで今後成し遂げたいことを教えて下さい。

スナックミー全体としては、「snaq.me」ブランドを確立していくことが大切だと思っています。スマホを「iPhone」と呼ぶような感覚で、おやつ体験のことを「snaq.me食べる」と言うように、1つの文化を作れたらよいなと思っています。

さらなるおやつ体験の向上を目指すには、パーソナライズは大きな鍵となりますので、CTOとしてテクノロジーを上手く活用していきたいです。

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